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首都大学東京 都市環境学部 都市基盤環境学科 コンクリート研究室

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コンセプトAbout our Speciality -Overview, 2012

 研究概要 ー2012年度
  1. 構造物の補修補強のための間隙充填モルタルの充填性能に関する研究
  2. タンピング試験によるコンクリートの施工性簡易評価手法に関する研究
  3. プレキャストコンクリート製品の耐久性に及ぼす養生条件に関する研究
  4. 既存コンクリートと補修材料の一体性確保ならびに補修・補強方法に関する研究
  5. コンクリートの割裂引張強度試験における供試体寸法の影響に関する研究
  6. 高度浄水処理施設の耐久性向上を実現する無機系材料ならびに高信頼性モルタル吹付け技術の開発に関する研究
  7. コンクリートにおける環境負荷抑制に関する研究
  8. モルタルの組織構造に及ぼす硬化初期の温度履歴養生に関する研究
  9. 鉄筋コンクリート構造物の弾性波モニタリングとトモグラフィ評価に関する研究




1.構造物の補修補強のための間隙充填モルタルの充填性能に関する研究
既存構造物の鋼板巻き耐震補強では,新たに設置した鋼板などの補強材と母材コンクリートとの間隙に,モルタルやセメントペーストを充填し,両者の一体化を図るグラウト工法が実用化されている.しかし,充填箇所の狭窄部などは,充填が不十分となることが懸念され,間隙幅と充填すべき面積に応じた間隙充填材料の構成を明確にすることが重要である.本研究では,間隙充填モルタルの,充填性に影響を及ぼす要因の明確化と,その制御手法の提案を目的として,間隙充填モルタルの塑性粘度および降伏値に着目し,間隙幅と骨材の粒径に応じた塑性粘度および降伏値について検討した.さらに,間隙充填モルタルの含有骨材の粒径に応じたレオロジー定数の適切な値,およびそれらを満たす配合の決定を目的として,間隙充填モルタルの充填性の評価を行った.

2.タンピング試験によるコンクリートの施工性簡易評価手法に関する研究
コンクリートのワーカビリティーは,コンシステンシーおよび材料分離抵抗性の程度によって定まる性質であり,従来からスランプ試験によって評価されている.近年,コンクリート材料の多様化に伴い,同一スランプであっても様々な配合や材料構成が想定され,ワーカビリティーが異なるコンクリートが多く存在する.このため,要求されたスランプを満たせば,施工に供することができると単純に判断するのは適当でないといえる.本研究では,同一の材料を使用し,水セメント比を固定して,細骨材率をパラメータとした配合の異なる複数のコンクリートにタンピング試験を適用し,変形特性からワーカビリティーを評価する試験としての妥当性,適用範囲について検討した.その結果,コンクリートを単位面積広げるのに要したエネルギー(TNU)と細粒子体積率の関係から,相対的にコンクリートの流動性を評価できる可能性が示された.

3.プレキャストコンクリート製品の耐久性に及ぼす養生条件に関する研究
プレキャストコンクリート製品の多くは蒸気養生され,蒸気養生を実施したコンクリートは,標準養生のコンクリートに比べ,強度および耐久性の低下が懸念されている.これは,蒸気養生後に二次養生で気中保管される場合が多く,表層からの乾燥により内部の水和反応が停滞することが一因であると考えられる.一方,気中保管中以降には,降雨によるコンクリートの再水和が考えられ,水和反応が再開した場合の検討は実施されていない.本研究では,プレキャストコンクリート製品の耐久性向上を目的とし,蒸気養生後における再給水によるコンクリートの水和反応の再開が細孔構造,強度特性および中性化性状に及ぼす影響について検討した.

4.既存コンクリートと補修材料の一体性確保ならびに補修・補強方法に関する研究
a) 母材コンクリートと補修材界面のせん断付着強度評価に関する研究
既設コンクリート構造物の補修・補強では,一般に断面修復による機能回復や耐力改善が行われるが,この場合,補修材料と既設コンクリートの一体性確保が要求される.一体性確保の判断には,両材料の付着界面における,せん断付着強度の適切な把握が重要となる.本研究では,無機系補修材料による付着界面とせん断付着強度の関係および付着界面の破壊過程を明らかにすることを目的として,実験および考察した.実験では,凹凸の異なる付着界面および強度の異なる補修材料を用いて,せん断付着強度試験を実施し,付着界面の凹凸を表すパラメータである算術平均粗さとせん断付着強度の関係を明らかとした.また,アコースティック・エミッション(AE)法による破壊過程および破壊機構の検討を行い,凹凸の程度と補修材料の強度が異なる場合の破壊過程が異なることを明らかにした.

b) CFRP格子筋と吹付けモルタルを用いたコンクリート部材の補強における界面せん断耐荷挙動の把握に関する研究
既設コンクリート構造物の補修・補強工法の一つに,連続炭素繊維(CFRP)格子筋と吹付けモルタルを適用した断面修復工法があり,この工法は,コンクリートの梁や壁面などの部材側面を対象としたせん断補強工法において有効である.本研究では,本工法におけるせん断補強効果の定量化を目的に,鉄筋コンクリート梁部材にCFRP格子筋と吹付けモルタルを適用した供試体の4点曲げ試験,および梁部材のせん断ひび割れ部を模擬した要素試験を実施し,梁部材におけるせん断耐力の設計法に関する検討,補修界面のせん断付着応力分担域について検討した.各実験では,格子筋のひずみデータおよびAE法のSiGMA(simplified Green’s functions for moment tensor analysis)解析結果から供試体内部の挙動把握および破壊過程の把握を行った.

5.コンクリートの割裂引張強度試験における供試体寸法の影響に関する研究
コンクリートの引張強度を実験的に求める手法として,円柱供試体を用いた割裂引張強度試験法が挙げられるが,本試験法では,供試体寸法に依存して得られる強度が異なり,供試体断面寸法の低下に伴い,引張強度が高くなることが知られている.本研究では,異なる供試体寸法(断面直径)の割裂引張強度試験を実施し,断面寸法と強度の関係を整理し,また,断面内のひずみ挙動およびAE法による供試体内部の破壊過程について検討した.その結果,断面寸法によって主破壊に至る過程が異なる可能性が示され,割裂引張強度算定式に補正係数を適用することで,断面寸法の違いによる強度の違いを補正できる可能性が示唆された.

6.高度浄水処理施設の耐久性向上を実現する無機系材料ならびに高信頼性モルタル吹付け技術の開発に関する研究
近年,オゾン接触槽や生物活性炭吸着槽などの高度浄水処理施設において,コンクリート躯体の劣化が報告されている.オゾン接触槽と生物活性炭吸着槽でのコンクリートの劣化機構は異なると考えられるが,未だその劣化機構は明らかとされておらず,効果的な補修・補強が行えない現状にある.本研究では,上記の劣化機構の解明を目的として,5種類の配合のモルタル供試体を作製し,オゾン劣化促進試験,高濃度炭酸水曝露試験,有機酸混合炭酸水試験,および生物活性炭吸着池模擬曝露試験を実施した.さらに,高度浄水施設の躯体コンクリート調査,浄水場の水質分析を行い,劣化機構の推定を行った.

7.コンクリートにおける環境負荷抑制に関する研究
a) エコセメントを用いた舗装用超硬練りコンクリートの耐久性に関する研究
都市ゴミ焼却灰を主原料とするエコセメントを積極的に活用するためには,アルカリ量や塩化物イオン量を考慮した場合,ペースト相の体積を減じることと補強鋼材を含まないことが大変有効である.すなわち,エコセメントの適用先として,舗装用の超硬練りコンクリートが有効と考えられる.本研究では,舗装用超硬練りコンクリートへのエコセメントの適用性評価を目的とし,エコセメントを用いた舗装用超硬練りコンクリートの基礎的特性および連行空気特性を変化させた凍結融解作用に対する抵抗性について検討した.

b) 歩道ブロックによる夏季温度特性の改善に関する研究
現在,過密都市部における夏季の日中の気温上昇と,夜間の気温低下の鈍化が問題となっている.この現象には,アスファルトコンクリートやセメントコンクリートによる舗装面積が高いことも影響している.都市部での気温特性の改善のためには,舗装への日射によるエネルギー入力を減らすこと,気温が低下に入った段階で,効率的にエネルギーを放出可能とすることが有効と考えられる.エネルギー入力減少の観点からは,遮熱の塗料を用いた舗装が提案されており,適用の実績もある.本研究は,歩道ブロックを対象に,ブロック表面形状および表面の特性が温度特性に及ぼす影響を検討するとともに,ブロック表面特性が再帰反射性に及ぼす影響を検討した.

8.モルタルの組織構造に及ぼす硬化初期の温度履歴養生に関する研究
プレキャストコンクリート製品の蒸気養生において,コンクリート標準示方書にはいくつかの標準的な履歴が示されている.コンクリートの給熱養生では,硬化初期の水和セメントペースト組織が,この作用によって生じる応力に耐えうることが重要である.結合材の種類や水結合材比によって極初期の組織形成には差があるため,コンクリート標準示方書の標準履歴が合理的とならない場合もある.本研究では,結合材種類を4種類,水セメント比を3種類としたモルタル供試体に対して,給熱養生を与える前の前養生時間を変化させ,熱作用を受ける前の組織形成の程度が,硬化後の特性に及ぼす影響について基礎的に検討した.

9.鉄筋コンクリート構造物の弾性波モニタリングとトモグラフィ評価に関する研究
既設コンクリート構造物の長寿命化のためには,対象構造物の健全性診断が重要である.健全性診断においては,非破壊試験法への期待が大きく,本研究では,弾性波法を適用したコンクリート構造物の損傷度評価を目的に,鉄筋コンクリート床版を対象とした,弾性波トモグラフィ法による損傷部の把握およびAE法によるモニタリングを行った.弾性波トモグラフィ法においては,数値実験によりセンサ間隔と検出可能なひび割れ長さの把握を行い,この結果を踏まえたモニタリングを行った.また,AE法による検討では,計測対象床版に車両による走行荷重を与え,損傷部の有無をAEセンサ位置における検出AEヒット数から相対的に評価した.


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