電子移行過程によって生成した励起多価イオンの偏光分光 (イオン−原子・分子衝突) |
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近内 亜紀子,田沼 肇,小林 信夫 |
原子核の周りを回る電子軌道は、主量子数n、方位量子数l 、磁気量子数mlで決まります。 多価イオンと原子・分子が衝突して、電子がイオンに捕獲されるとき、どの軌道に捕獲されやすいか、n、l についてはよく実験がなされ、それを再現するような理論もあります。しかし、磁気量子数mlがどのようになるかについては、はっきりとした理論もなく実験もほとんどなされてきませんでした。 我々はこの磁気量子数の分布を、実験によって調べています。
多価イオンは原子・分子と衝突すると、電子を捕獲して励起状態になります。この、衝突によって生成された励起状態の多価イオンが、脱励起する際に出す光の、ビーム軸に対する偏光度は、捕獲された電子の磁気量子数と密接な関係があります。この偏光度を調べることによって、捕獲される電子の磁気量子数分布の特徴を調べています。
実験装置にも工夫がなされ、平行光と垂直光の同時計測を可能にしています。
これまでにいくつかの衝突系で実験を行ってきました。磁気量子数の分布は衝突系に依存すること、そしてそれは衝突中の強い電場によるStark効果の影響であることがわかってきました。
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参考文献
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