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表面反応
西村 仁志,東 俊行

 ここでは多価イオン(2価以上の正イオン)を金属の表面に衝突させ,表面,イオンに何が起こっているかを調べています.しかし「衝突」とはいっても,球と球がゴツンと音をたてて衝突するのとは違い,より複雑であり,「表面」とはいっても,まっさらな壁のようなものではなく,イオンのようなミクロなものを当てるわけですから,イオンから見れば,そこには規則正しく並んだ原子の集団の層が数層見えています.金属は物性論で習うように多量の電子が自由に動き回っています.一方,イオンは電子の欠乏状態ですから,電子が欲しいわけです.
 イオンが金属表面に飛んでいく最中,イオンと金属内の電子にはクーロン力(引力)が働きますから,その電子のエネルギーが表面の仕事関数を上回れば電子は飛び出してきて,イオンに捕われイオンは中性になります.しかし,このとき捕われた電子はイオンの原子核からかなり遠い軌道に入るので,弱い束縛状態にあります.これが表面に入って行くと,弱い束縛状態にあるイオンの電子は,表面の多量の電子によるクーロン反発力を受け,これがイオンの原子核との引力よりも勝り,弱い束縛状態にあるイオンの電子はほとんど剥ぎ取られてしまいます.これが表面数層の原子と数回衝突し,あるものはその不足を完全に補充し,あるものはいくらか不足を残したまま跳ね返ってきます.電子の補充のされ方は,衝突の回数によっても,何層目の原子と衝突するかによっても変わってきます.その衝突の仕方の違いによっておこる,表面からイオンへの電子の補充のされ方の違い,そしてそのメカニズムを研究しています.



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