[HOME]-[研究概要・イオン−電子衝突における微分散乱断面積の測定]

イオン−電子衝突における微分散乱断面積の測定
松本 淳,田沼 肇,小林 信夫,壇上 篤徳(新潟大),吉野 益弘(芝浦工大)

[e-ion_result]  イオン−電子衝突過程は,強い電子相関が働く典型例として興味を持たれています。応用面では,その励起過程が天体物理での原子素過程,プラズマ工学における不純物問題,温度測定などの分野で注目され,それらの基礎データとしての要求が高まっています。
 しかし,イオン−電子衝突の実験は,固体・ガス標的と比べて標的密度が小さいゆえ,信号強度が弱く非常に難しいです。そのため積分断面積のデータも少なく,微分断面積のデータは皆無といってよい状況です。
 そこで,本学に設置されているECR型多価イオン源を用いてイオンと電子を衝突させ,その微分励起断面積を測定する目的で,このプロジェクトが始動しました。
 測定系は,まず理論計算もよく行われいて,実験的には過去に1例報告されているAr7+-e- 衝突エネルギー100 eVの系です。
 信号強度の弱い条件下で微分散乱断面積を測定する場合,従来型の検出器では各々の角度で測定を繰り返さなければならず効率がよくありません。そこで,我々のグループではエネルギー・角度方向で同時分析可能な分析器・トロイダイル型アナライザーと二次元検出器を組み合わせて広い角度に渡って同時測定可能にしました。  現在,弾性散乱信号の検出に成功し微分断面積の導出するための方法を模索しています。併せて,装置の改良を続け非弾性散乱信号の検出に挑戦しています。
 右上の図は,イオン−電子衝突における弾性散乱信号の散乱角度・エネルギー分布を表したものです。散乱角度が大きくなるにつれて信号強度が弱くなっているのがわかります。30°より小さな角度の信号は,検出器の測定範囲外で切れています。
 現在,この結果を解析する方法を開発しています。

参考文献
  • A.Danjo, Y.Kato, N.Kobayashi, J.Matsumoto, H. Shimizu, H.Tanuma, Z.Wang, K.Yamazaki, M.Yoshino, Review of Scientific Instruments, 70, 1970 (1999)


[HOME]-[研究概要・イオン−電子衝突における微分散乱断面積の測定]