アジア都市圏における水問題解決のための適応策に関する高度研究 本文へジャンプ
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◆高度研究の内容

◆テーマ1: 都市洪水災害問題・都市河川水不足問題


近年の気候変動や、ヒートアイランド現象による都市豪雨発生頻度の増加、さらには都市化に伴う建物や道路などの不浸透面積の増加により、従来ゆっくり流出していた雨水が一気に河川に流れ込むようになり、一度豪雨が発生すると溢水、氾濫が多発するようになっています。
 
一方、このような豪雨時の都市洪水の増大に反し、地下水の低下や湧水の涸渇などの現象が生じ、平常時の都市河川流量不足が顕著となっています。

これらの水問題に対して、私たちは、高精度な地物データGISを用いて個々のビルや家屋、駐車場など正確な不浸透域を抽出し、豪雨の流出経路を物理的に忠実に再現する精緻な都市型氾濫浸水予測モデルを提案・構築しています。また、本モデルに蒸発散や地下水流動モデルを追加し、平常時の河川流量を予測するモデルの構築も行っています。
 
このような高精度な都市流出モデルは、現在まだ世界でも開発されていません。本モデルは、アジアの都市を対象とした都市洪水災害問題、都市河川水不足問題に対して、有効な技術手段となるものと考えています。



◆テーマ2: 安全な飲料水の配水問題

国民生活を支える都市基盤である「水道」に目を向けると、我が国の技術レベルは、アジアのみならず、世界においても「トップランナー」とも呼ぶべき卓越した水準にあります。特に東京都は、世界主要都市の漏水率が軒並み10〜30%であるのに対し、東京都の漏水率は僅か3.1%とされ、各都市から高い関心が寄せられています。

また、東京都水道局では、利用者ニーズの高度化・多様化に応じるため、国の水質基準よりも高いレベルでの水質目標の設定や、“水源から蛇口まで”の総合的な施策展開を行っています。

こうした中、首都大学東京と同局は平成17年度より連携研究を実施し、「水道送配水管網システムの合理的水運用計画に関する共同研究」、「合理的な漏水量算定方法の構築に関する共同研究」等に取り組み、量的及び質的な視点から、更なるレベルアップを目指しています。

こうした世界にも誇れる水道技術を本研究課題のテーマに掲げ、実フィールドを備えた最先端の研究に携わることは、人口が過度に集中する都市や、これから急激な発展を向かえるアジア都市の「人材育成」に対して極めて有用です。



◆テーマ3: 貯水池や河川の水質汚濁問題

アジア諸都市では、産業の発展と高度化に伴い、水不足と水質悪化が著しくなっています。「安全な水」の確保は、国民の生活を支える必要最低限の条件であるにもかかわらず、アジア大都市圏では、水道水の量と質が極端に貧弱であり、今後その傾向は増大し、水戦争の様相を呈していくと考えられます。          

 「安全な水」の確保は、水源となる湖沼・貯水池の水質を、良好に維持することから始まります。水源が汚染されてしまうと、その後の浄水処理には多大な労力を要し、アオコが発生した場合には、浄水処理も困難になります。

したがって、アジア大都市圏の飲み水を守り、生活を向上させるためには、水源となる湖沼・貯水池の水質管理技術を構築することが重要な課題となっています。
 
私たちは、平成17年度から東京都水道局と連携し、「小河内貯水池の富栄養化のメカニズムと水質改善のための共同研究」を推進しています。そこでは、水源貯水池に流入する汚濁負荷の解析とモデル化、湖水流動特性の観測と解析、水質と流れがアオコ発生に及ぼす影響、アオコ抑制のための対策工法(分画フェンス等)の評価を行ってきており、水質管理技術に関する研究実績を豊富に有しています。

そこで本研究では、アジア諸都市における水源貯水池の流動・水質予測モデルの構築、水質改善施策や水質管理技術に関する高度研究とそれによる人材育成を行います。



◆テーマ4: 海岸浸食問題

開発途上のアジア諸国では、埋め立てや浚渫による港湾の建設は、沿岸部の浅海域を消失させ、生態系に大きな変化を起こし、工業地域や都市部からの排水、沿岸部での魚介類の養殖による海水の汚染・富栄養化が深刻な問題となっています。
 
第二次世界大戦以後、急激な変化からは取り残されていた東南アジア諸国では、近年、開発が急ピッチで行われ、数千ドルを超える所得の達成を目指しています。

これらの国々の開発における問題は日本が過去に経験したものと同じで、学問的知識の欠如とそれに起因する輻輳化した河川・沿岸域の利用にあります。

国の施策として都市および臨海型産業を育成しようとする要求が性急かつ無配慮な開発に結びつく場合、かつて彼らが経験したことのないほどの急激な環境システムの変化にさらされることになるでしょう。この変化は複雑な因果関係から成立しており、現在の科学技術をもってしても予測できる時間的空間的な範囲は限られています。

一方、多くの東南アジア諸国は、世界でも有数の災害国でもあります。各国の海岸地帯では、半世紀の間に明らかな海面上昇が認められています。地球温暖化にともなう海面上昇や、台風・高潮、沿岸流の変化、河川上流でのダム建設による供給土砂の減少など、いくつかの原因が指摘されていますが、特に最近は、激しい海岸侵食に直面しています。

そのため、海岸堤防が何ヶ所も破壊され、数千人の人々が内陸に移住せざるを得ない状況に直面しています。そこで、東南アジアの中でも特に開発の加速度が大きい諸国の沿岸域を対象とし、海岸侵食が急速に進む海岸の保全対策に貢献するとともに、水環境分野における科学技術の開発能力の向上と、研究者、技術者の人材育成に寄与することを包括的な目標としています。





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