倉田研究室紹介

東京都立大学大学院・理学研究科・数理科学専攻・博士前期課程受験希望の方は、次の「研究室概要」および「問答集」を参考にしてください。もし私の研究室に興味を持っていただき、一度訪問されたい場合は、e-mailでご連絡ください。

H25倉田研究室概要


大学院受験者向け「問答集」:

・首都大学東京大学院・博士前期課程で私の研究室で学びたい人へ、よく聞かれることを中心におもいつくまま書いてみました。何かの、参考にしてください。

主要テーマ: 私の研究室では、解析系の中でも 偏微分方程式、変分問題、最適化問題や逆問題の研究が主要テーマです。さまざまな自然現象の法則はその個性を適切に含むような偏微分方程式で記述されます。その数学的解析を通して個性あふれる自然現象の解明をめざします。といっても、興味深い自然現象とそれを記述する偏微分方程式は膨大です。どの現象に興味をもって、どんなことを理解したいのか?その動機、問題意識、取り組み方は人それぞれです。私の研究室では、それらの中から例えば、数理生態学での個体数増殖モデル、超伝導現象を記述するGinzburg-Landau方程式、層状媒質での非線型光学に現れる波の伝播を記述する非線型Schrodinger方程式、相転移現象や神経パルス伝播を記述する反応拡散方程式などの数学的解析を行い、多様な定常状態の構造を理解したいと思っています。現象のエネルギー極小な状態の存在を変分問題の解としてつかまえるという変分法的視点が基本です。他に、固有値最適化問題や逆問題にも興味をもって研究しています。ここでは説明できませんが、興味深いさまざまな問題が存在し、わくわくするようなおもしろい数学に出会うこともあります。皆さんが、自分のおもしろいと思うことに出会えることを祈ります。

自分が何を研究したいかはまだわからいんですけれどいいですか?
はい、結構です。心配ありません。たぶん。興味というのも、序々にわいてくるもんです!不思議(?)と、学べば学ぶほど、新たな疑問や興味が涌いてくるのです。 でも、もちろん、自分で探す努力は必要です! なにも高尚な興味や話題でなくても、微分積分であれ、線型代数しか使わない話題であっても、わくわくする話、びっくりするような話もたくさんあるようです。もちろん、おもしろいと感ずる少し高尚そうな定理や理論をまずは理解したい!と思うこともしばしばでしょう。苦労して理解できたときの喜びも格別でしょう。そうして山を1つ乗り越えたら、また新たな興味が涌いてくるものなのですね。

研究テーマはどうやって決めるのでうか?上のテーマのどれかとか決まっているのでしょうか?
いいえ、決まっておりません! 基本的にはあなたが選ぶのです。 上の研究テーマは現在の研究課題テーマの例を挙げたのであって、あなたの研究テーマをこの中から必ず選ぶというわけでもありません。研究テーマも少しづつシフトしていったりもします。はたまた、がらりと別のテーマを研究したくなったりもありえます。大きくそれることはないとは思いますが。。それでも、上に上げたテーマに関連した数学だけでも膨大です。あなたの興味を見極めながら、あなたが感性を磨きながら、一緒にあなたにふさわしいテーマを模索しましょう。実は、研究テーマ選び、選択は大切なプロセスです。もちろん、その選択の過程でいくつかの研究テーマの示唆はできるだけするでしょう。その中から選ぶもよし、自らのテーマ探しも大歓迎です。

予備知識は?: 私の研究室で、すくなくとも博士前期課程2年間でそうした勉強、研究をしたいと思う人であれば大歓迎です。一緒に学び、研究しましょう。もちろん、入学試験に受からなければなりませんが。。入学のための基礎知識は、つねづね基本的には微積分、線形代数、ベクトル解析、常微分方程式、複素解析あたりをそこそこ理解していれば、十分だとおもってます。一番大事なことは、自分で考える姿勢ができていることです。そういう人であれば最高です。知識の多さは問題ではありません。どこまで知っているのか、自分の理解を人にきちんと伝えられるか、自分で問いかけることができるか、そういうことの方が大切です。もっとも、たいていはさらにフーリエ解析、ルベ‐グ積分や関数解析も履修している人が多いでしょうが。履修したことがあるなら、それだけで十分です。それはそれで、心強いです。しかし、そこまで勉強していることは期待はしていません。

入学前に勉強しておいた方がいい本とかありますか?
自分の大学での授業に関するテキスト、セミナーのテキストなどをじっくり読んでください。1冊の本をすみからすみまで読みとおすことは結構大変なことです。しかし、確実に力がつきます。もちろん、あれやこれや面白そうな話題の本をひろい読みするのはいいと思います。夢やあこがれも大切でしょう。私なんかは、学生時代からおもしろそうでいつか読んでみたいものだとおもって手元においてある本が山と読まれないまま積まれています。中途半端に読んだ本が10冊あるよりすみからすみまでじっくり読んだ本が1冊あるほうが結局は近道だったりすることもあるようです。そう、あれもなんとなくわからない、これもなんとなくわかるようなわからないような気がするという調子だと、いつまでたってもそのあたりを何度もうろうろしてまわってるだけになりかねません。いつまでたってもよくわからないっていう気持ちがたまって体にもよくないですね。 1冊乗りきると、土台がしっかりするからでしょうか、他の本でも読みやすくなったりするもんです。たぶん、はい。

どうしたら数学をよくわかるようになるのでしょうか?
うーん、難しい質問ですね。いろいろアドバイスすることはありますが、万能のマニュアルはありません。この数学がわかった!いう感覚もそのレベルは人それぞれでしょうし、同じ人でも理解のレベルは序々に進化します。まあふつうは素朴にわかった!と思えるよう勉強し、応用問題を解いたり、先に進んで勉強した後で、ああ、この定理はこんなことにもつながっているのか!などと実感し、またひとつレベルアップした理解が深まる、といったプロセスをふむことになるのだと思います。わかった!という感覚に到達するには、手をうごかして計算問題を解いたり、工夫したり、疑問点を自分でピックアップして、自分で考え、調べたり、人に聞いたりして、自分で解決していくという体験の積み重ねが必要です。 従って、結局は自分で努力するしかないのです。 また理解が自分のひとりよがりでないかどうかを、チェックすることも必要でしょうね。 では、どうやって自分の理解度をチェックするといいのでしょうか? そうですね、自分が勉強して理解したことを友達に説明する、あるいはよくわからいなと思ったことをこういう事がわかんないんだけど?って議論したりするのもいいでしょう。 友達と数学の議論ができる、というのも結構大事な資質ですね。 自分1人でも、定理や定義を何もみずに紙に書き出せるか?なんていうのも結構やってみると大変です。感覚的にはわかってるんだけど、正確にはうまく説明できないなんてこともあるでしょう。数学の定理を理解したりするにも、厳密な論証も必要ですが、感覚的な理解というのも必要です。わかった!!というためにはです。論証と感覚、両方が必要です。いくら厳密に論証できても、感覚的にわかってなければ、それを使って演習問題を解くことすらできないこともあります。一方で、なんとなく感覚的にもっともらしい気がするし、こういう例とかこんな例でも正しいけど、なんか証明できないなあ・・証明しにくいなあ。。なんてこともあるでしょう。そういう思考錯誤を今のうちにいっぱいやっておくといいのでは?と思ったりしています。ふだんから、自分にとってのお気に入り定理(あるいは理論)ベスト10はなにか?なんて考えてみるのもいいかも?たぶん、勉強すればするほど、ベスト10のリストが更新され、進化するのではないでしょうか? ともあれ、こうした論理的思考力を鍛えることも修士1年あたりでは重要なことになるでしょう。

入学したら、セミナーはどんな風にやるのですか?
通常、私のゼミでは少なくとも半年は基本的なテキスト講読をみっちりやります。場合によっては1年をかけることもありますが、修士1年後半あたりから、個々の学生の興味に従って(私の興味もかなり入ることにはなりますが。。)研究テーマをさぐります。 たぶん、基本的には、今あなたの大学での卒業研究ゼミでやってるセミナーと同じようなスタイルでしょう。しかし、首都大学東京・大学院では、もっと小人数でのセミナーになることでしょう。多くて2,3人、普通は1対1のセミナーが多いですよ。もちろん、博士後期課程の学生とか上級生があなたのセミナーにも参加することもあるでしょうが、基本的にはあなたの理解の進度に大きく依存します。がんばってください。それと、めでたく修士課程卒業するためには、修士論文を書き上げることがもっとも重要ではありますが、ほかの分野(解析系だけでもたぶん十分だと思いますが)授業の単位も修得する必要があります。セミナーでのテーマ以外にも、もちろんおもしろい話はたくさんあります。見聞を広め、いろんな数学の世界を体験してください。

修士論文って、新しい定理を発見しないといけないんですか?できそうにないんですけど。。
そうです!なんでもいいから、新しいことをみつけられるようがんばってみてください。というか、 まず新たな疑問、問題提起から始まる、といった方がいいのかもしれませんね。こういうことはどこまでわかっているのか?こんなことに対して何がわかるか?いろんなことを学んでいくうちに、自然とさまざまな疑問や興味がふつふつと涌いてくるのです。そうなると、新たな定理を見つける時もちかづいているわけです!?また、新しければ何でもいいか?というと、ある意味そうとも言えますが、やはりおもしろい!と感じるものであるべきです。とは言っても、誰しも最初からどこにまだ見つけられてない新しい定理があるか?などわからないのです。一方で、数学教室には、毎週のごとく何冊もの数学研究雑誌に新しい研究論文(当然、新しい定理が含まれている)が、わんさか出版されてます。とても信じられないですね、どうして新しいことがそんなにいっぱい次から次へと見つかるのか?不思議ですね!私にも、どうしたらそんなに次々と新しい定理が発見できるのか知りません。でも、それだけ、数学の世界は広く、数学的に理解したいけどまだわかってないことがたくさんある!ってことなんでしょうね。新しい定理、全部が全部、歴史を動かすほどの大定理ばかりじゃないようです。それでも、おもしろい!って感じる定理がたくさん見つけられるんですね。どの定理をおもしろい!って感じるかは、もちろんあなたの感性です。感性もたぶん序々に研かれるものです。ふだんから、自分がどんな定理をどんな理論をおもしろいと思うか考えながら、いい数学をいっぱい鑑賞することでしょうね。そういう感性を磨くためには。。あなたも、何か1つそういう定理を見つけてみたいと思いませんか?