運動分子生物学研究室

 教授:藤井宣晴  准教授:眞鍋康子  助教:古市泰郎

 首都大学東京 人間健康科学研究科 ヘルスプロモーションサイエンス学域

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研究室のメインテーマ
(1) 骨格筋から分泌される生理活性因子(マイオカイン)の探索

運動が健康に良いことは、多くの人が経験的にも認めることだと思います。運動がもたらす健康効果は多様で、しかも全身に現れます。疫学研究によると、習慣的な運動は種々のガンの発症リスクを減らします。また、アルツハイマー病の発症を減らし(脳)、インスリン分泌能を高め(膵臓)、免役能を高め(血球系)、代謝機能を亢進(筋・脂肪・肝・心臓)させます。なぜ、このように多様な効果が全身に現れるかは、じつはほとんど分かっていません。

 

本研究室は、骨格筋から分泌される多様な生理活性因子(総称してマイオカインと呼ばれます)群が、血液循環を経て全身に作用し、健康効果をもたらしているのかもしれないと考えています。最近まで、このアイディアを科学的に検証することは、方法論的に困難でした。わたしたちはこの困難を克服し、マイオカイン探索の冒険に出発しました。

 

日本語の参考文献

眞鍋康子、藤井宣晴; 糖尿病における運動とマイオカイン. Diabetes Frontier, 24, 2013
眞鍋康子; 骨格筋代謝と疾患の最前線 内分泌器官としての骨格筋, In実験医学, 32, 1346-1352, 2014

古市泰郎, 藤井宣晴; 筋から分泌されるマイオカインと代謝. 体育の科学, 64, 81-86, 2014

  

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(2) 運動が糖尿病を抑制する分子機序の解明


− 「天地創造の6日目、人が造り出された原初に、神はその末裔たちが不活動で飽食の時代を生きねばならなくなるとは思いもよりませんでした。なので神は我々に、血糖(生体のエネルギー源)を上げるためのホルモンは幾重にも授けたのに、下げるためのホルモンはインスリンただ一つしか与えませんでした。そのため、インスリン機構の崩壊は糖尿病に直結するのです。人類が糖尿病に対して脆弱な理由はここにあります。」

 

運動の恩恵効果を知らなかったら、本研究室が編集する「糖尿病学」の教科書は、きっとこんな書き出しになってしまっていたことでしょう。

 

本研究室が運動の何を知っているのかって?神は先見の明を持っていて、インスリン以外にも、血糖値を下げる機構をきちんと与えていてくれたのです。わたしたちが、それに気づかなかっただけなのです。

 

  実は筋肉を収縮させると、インスリンに匹敵する強力な血糖降下作用が生まれます。骨格筋細胞に血液中の糖が大量に取り込まれるのです。しかもその作用は、インスリンとは全く異なる細胞内情報伝達機構によって生まれます。現在は少なくとも3つの機構が備わっていることが明らかになっています。しかし、そのことを知る人はまだまだ少ないです。ほとんどの教科書にも記載がありません。本研究室はインスリン非依存的な血糖降下機構(骨格筋への糖輸送機構)の分子機序の解明を目指しています。

 

日本語の参考文献

眞鍋康子、 藤井宣晴;筋収縮が糖尿病を予防・改善することの分子スポーツ医学的考察. 医学のあゆみ, 243, 918-922, 2012
眞鍋康子, 藤井宣晴; 糖尿病における運動とマイオカイン. Diabetes Frontier, 24, 174-179, 2013

眞鍋康子, 藤井宣晴; 運動による血糖降下のメカニズム, In糖尿病治療のニューパラダイム(加来浩平 編集),186-191, 医薬ジャーナル社, 2014

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(3) 運動の情報が細胞→核→遺伝子へと伝達される仕組みの探索



運動すると、血糖が下がり、脂肪が減り、筋肉は増え、血圧が下がり、爽快な気分にさえなります。いいことずくめです。これは、運動が有する何らかの情報が生体に働きかけ、細胞→核→遺伝子へと伝達された結果、生じる現象です。その伝達の仕組み(細胞内情報伝達機構)の解明に取り組んでいます。

 

例えば、筋収縮が筋肥大を引き起こす場合、収縮という「物理的情報」が何らかの方法で「化学的情報」に変換され核に伝えられないと、遺伝子発現は生じません。いったいどんな分子が情報変換装置として働いているのでしょう?。探索の旅は続いています。

 

日本語の参考文献

眞鍋康子、井上菜穂子、高木麻由美、藤井宣晴; 真核細胞のエネルギー・センサー「AMPキナーゼ」, 比較生理生化学, 29, 70-75, 2012

眞鍋康子, 豊田太郎, 土屋美穂, 藤井宣晴; 運動の糖代謝に対する急性効果の分子メカニズム.内分泌・糖尿病・代謝内科, 31, 415-420, 2010
眞鍋康子; 骨格筋代謝の分子メカニズム, Diabetes Frontier, 25, 125-128, 2014


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当研究室が持つ特殊技術

 

・in situ 筋収縮システム(麻酔下のマウスやラットの下腿骨格筋を電気的に収縮させる)

・in vitro 筋収縮システム(骨格筋を摘出して酸素供給下の試験管内溶液中で収縮させる)

・骨格筋を用いたグルコーストランスポートの測定システム

・in vivoエレクトロポレーション・システム(生きたマウスの骨格筋に遺伝子導入・発現)

・培養骨格筋細胞収縮システム

・サテライト細胞からの骨格筋初代培養細胞の樹立

・ショウジョウバエを用いた骨格筋特異的ノックダウン系統の樹立

 

その他、通常の生化学、分子生物学、細胞生物学、遺伝子工学実験用の機器はそろっています。