伊豆大島でみられるサクラ、オオシマザクラ。 春、島はサクラで包まれます。

photo by Kondo
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1.多様な種類のサクラ

オオシマザクラ(別名:タキザクラ)は関東以南の島嶼の海岸沿いから山地にかけて多く生育するサクラの野生種です。伊豆諸島原産で関東南部の海岸に近いところでよく見られますが、多摩丘陵では、里山の林縁などに、しばしば植栽されています。 実は、このオオシマザクラは、私たちに身近なサクラの一つであるソメイヨシノなどの多くの栽培品種を生み出したサクラなのです。

日本には約10種の野生のサクラが自生しています。これらのサクラをもとにして、花を鑑賞するための品種改良が古い時代より行われ、数百種類も品種が生み出されました。品種の育成が盛んになったのは江戸時代以降で、生み出された品種は接ぎ木などのクローン増殖により代々保存されてきました。

2.ソメイヨシノに保存されたオオシマザクラ

近年、Kato et al. (2014)により、DNA解析と詳細な形態解析による精度の高い識別技術の開発が進み、どのように身の回りのサクラが育成されてきたのかが明らかになりつつあります。多くの品種にオオシマザクラ由来のDNAがみられており、ソメイヨシノでは約半分の遺伝子がオオシマザクラ由来です。

オオシマザクラは、身近なサクラの中にもDNAを通じてその面影を残しているのです。

 

図1. 栽培品種の成立に関与した野生種を推定する遺伝解析。棒グラフは野生種の割合を推定。
ソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラ由来の遺伝子を約半分ずつ持っています。(森林総合研究所 No.54)
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図1. 栽培品種の成立に関与した野生種を推定する遺伝解析。棒グラフは野生種の割合を推定。
ソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラ由来の遺伝子を約半分ずつ持っています。(森林総合研究所 No.54)
ソメイヨシノ
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キーワード

遺伝解析 / エドヒガン / オオシマザクラ / ソメイヨシノ / 栽培品種