首都大学東京は今年で開学12年目の新しい大学ですが,理工学系数理科学コースには,その前身となる東京都立大学理学部数学科の伝統が脈打っています.オープンクラス「高校生のための数学―夏の学校」も,東京都立大学時代のオープンクラスを引き継ぐもので,今年で21回目を迎えます.
数学は,人類の歴史と同じくらいに長い歴史と伝統を持つ学問で,人類の最も高度な知的営みの一つとして独自の発展を遂げてきました.そうして作られてきた理論の数々は,
自然科学や工学の土台としての役割も果たしています.数学の研究は現在も活発に行われ,日々進歩を続けています.その結果として,長い間未解決だった「フェルマー予想」や
「ポアンカレ予想」のような難問が解決する一方で,「リーマン予想」のようにいまだに解決を見ない難問も数多く残されています.近年では,コンピュータサイエンスや遺伝子工学をはじめ,様々な異なる領域との交流も急速に進んでいます.
さて,みなさんは小学校の算数から始めて,中学校,高等学校と数学を学んできましたが,その先にどのような数学があるかイメージできるでしょうか?ただ難しく,複雑になるだけだと思っていたら,それは正しいとらえ方ではありません.どんな高度な数学の理論でも,もとになる考え方は自然で単純なものです.結局は,人間が考え出したものなのですから.
この「高校生のための数学―夏の学校」では,数理科学コースの4名の教員たちが,大学で学ぶ数学や,数学・応用数理科学に関する興味深い話題について,分かりやすく明快に講義します.数学・数理科学がどのような学問であるか,多少なりとも知る手がかりとなることを我々は願っています.第一線で活躍する数学者たちの生の講義を通して,高校数学の先にある,大きな可能性を秘めた未知の世界を,少しばかりのぞいてみませんか?
(夏の学校 構成委員会 黒田 茂,村上 弘,深谷友宏,川崎 健)
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