内田研究室紹介

内田研究室では,計算数論(数論アルゴリズム)を研究しています. 計算数論は,整数論の諸問題を計算機を用いて研究する分野で,私は主に次のようなテーマを扱っています.

各テーマを少し詳しく解説します.

代数曲線とアーベル多様体の計算数論

フェルマーの最終定理に代表される,方程式の整数解を求める問題,すなわち,不定方程式を解く問題は,古くから数論における重要な問題です.20世紀以降,不定方程式を解く問題を,代数多様体の有理点を求める問題として捉えることで,代数幾何学の手法を用いた研究が行われるようになりました.その成果として,代数体上定義された代数曲線やアーベル多様体の有理点の構造がどのようになるか明らかになっています.これに対して,代数曲線やアーベル多様体が具体的に与えられたとき,その有理点を実際に決定する一般的なアルゴリズムは知られていませんが,特別な場合には,有理点を決定することができます.

本研究室では,このような有理点の決定に関わるものを中心として,代数曲線やアーベル多様体の計算数論を研究しています.具体的な研究対象としては,有理点の数論的複雑さを測る高さ関数や,楕円曲線の等分点を零点とする等分多項式とその超楕円曲線のヤコビ多様体への拡張などがあります.また最近では,ウェアリングの問題や数値積分公式に関連する不定方程式を,代数曲線の有理点に関する成果などを用いて研究しています.

計算数論の暗号理論への応用

上で述べたような代数曲線とアーベル多様体の計算数論は,暗号理論にも応用されています.例えば,楕円曲線やアーベル多様体から構成されるペアリングと呼ばれる双線形写像は,暗号理論において,離散対数問題への攻撃や,新しい暗号プロトコルの構成などに用いられています.このような暗号理論で使われるアルゴリズムの開発やその高速化を研究しています.

学生へのメッセージ

近年の計算機やアルゴリズムの進歩で,代数曲線やアーベル多様体の数論にまつわる様々な計算が具体的にできるようになってきました.また,これらの計算を暗号理論などに応用することも盛んに行われています.まだまだ研究すべきことがたくさんある分野でもありますので,ぜひ,この分野の研究に足を踏み入れてみてください.


問合せ先:yuchida (at) tmu.ac.jp
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