テキスト理系の数学10 「代数学」(数学書房)
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                             津村博文著  224頁・2300円+税 ISBN 978-4-903342-40-5  

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はじめに

 
このテキストは,線形代数を一通り学習した方を対象に,いわゆる群・環・体を中心
 とする代数系の基礎理論について,内容をできるだけ絞った形で必要なことを手早く
 学習することを目的として書かれています。定理や命題の後に簡単な例を多く取り入
 れて,初学者の理解を助けるとともに,文中の問や章末問題のほとんどすべてに関して,
 最後に解答を載せることで,学習の成果を確認できるようにしてあります。

 
著者の経験から,大学1・2年次に線形代数や微分積分,さらに位相空間論などで高校
 と大学の数学のギャップに悩み,好きだった数学の勉強に挫折しかかった学生さんに
 とって,その学習の仕切り直しとして,あまり多くの予備知識を必要とせずに抽象数学
 と触れ合えるという点で「代数学」は良い題材ではないかと思います。


 
一般論としての群や環の概念は,抽象的で,そのことを学ぶ意味がしっくりこないと
 いう声も聞きます。ただ非常に限られた,いわば必要最小限の性質を仮定した集合を
 考えることで,その世界であれば共通に成り立つ理論が構築されます。それがわかると,
 例えば整数の世界の
素因数分解が多項式の世界での因数分解と同じものである(だから
 名前も似ている)などということを心から理解できます。

 さらに少し楽しい例をあげてみます。素数 p が平方数の和でかけるのは,p が 4 で
 割って1余る場合に限られます。例えば,p=5, 13, 29 などは 5=12+22, 13=22+32, 29=22+52
 などですが,p=7, 11, 19, 23 などは平方数の和では書けません。これは整数の世界だけ
 で考えていても難しいのですが,それをもう少し広い世界,つまり m+n
i(m, n は整数,
 i は虚数単位)といういわば「複素整数」とでもいう世界で考えると、5=(1+2i)(1-2i),
 13=(2+3i)(2-3i), 29=(2+5i)(2-5i) のような
複素素因数分解のような概念にたどり着きます。
 本来、素数はこれ以上分解できないはずなのに,世界を広げるとさらに分解できる...
 そのための条件が 4 で割って1余るということ... これは群や環を学んで初めて出会える
 ことなのです。

 
このように考える世界を広げることで,われわれの身近な問題への全く異なる視点
 からのアプローチが可能になります。これは高校数学の限界を乗り超えるという意味
 で非常に大事なことです。確かに高校数学と比べて、大学数学は計算が少なく、証明
 が多いです。しかしこれはまさに「広い世界の理論」を作るために新しい概念を定義
 し、その性質を一般的に考察し証明することの重要性を意味しています。本書のテーマ
 の代数学はそのような理論構築の入門的段階を学習するのに適した題材だと思います。
 多くの方に,代数学の魅力を感じていただけたらと思っています。


サポート内容

 既に読者の方から,誤植や内容のミスをご指摘いただいています。お礼申し上げます。
とくに詳細なご指摘をいただいた高校教員の中村俊哉さんと首都大数理4年の飯野さんには
深く感謝いたします。

 以下,正誤表や追加の記述を書き加えていきます。

  
正誤表(2016年1月版)


  以下、建設中

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