「トロピカル幾何ワークショップ」を下記の要領で開催いたします。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。 日時:平成30年2月1日 10:30--17:30 場所:京都大学大学院理学研究科数学教室 理学部3号館108セミナー室 講演者およびプログラム(敬称略) 10:30--11:30 鷲見拳(京都大学) 11:45--13:15 昼休み 13:15--14:15 景山友樹(首都大学東京) 14:45--15:45 三上陵太(京都大学) 16:15--17:15 伊藤孝明(首都大学東京) 17:30  ワークショップ終了 なお、本ワークショップでは、各講演の終了後に15分程度の質疑応答を想定しております。 各講演者の講演題目と概要は以下の通りです(敬称略、講演順): 鷲見拳 題目:トロピカルテータ関数とトロピカルアーベル曲面上のリーマンロッホについて 概要:2008年にG.Mikhalkin,I.ZarkovnやA.Gathmann, M.Kerberはトロピカル曲線に対するリーマンロッホの定理を証明した. これはM.Baker, S.Norineによる有限グラフに対するリーマンロッホの拡張として得られた.この高次元化には因子もしくは線束のオイラー標数をどう定義すればよいかという問題があり,主張自体が確立されていない. 本講演ではこの高次元化が成り立つのかどうか検証するにあたり,トロピカルアーベル曲面におけるリーマンロッホの不等式を示す.またその過程で,トロピカルアーベル多様体上のテータ函数のなす空間に適当な位相を入れることでその空間が凸多面体となることを示す. 景山友樹 題目:トロピカル曲線の安定ゴナリティに対する因子的条件 概要:dを正整数とする. コンパクトリーマン面に対し, 射影直線へのd次正則写像が存在することと, 次数d, 階数1以上の因子が存在することは同値である. トロピカル曲線に対し, それぞれに対応して安定d-gonalと因子的d-gonalという条件があるが, 両者は同値でない. そこで, 安定d-gonalと同値である因子的条件を新たに定義した. 本講演では, この因子的条件を紹介し, 同値性の証明の要点を述べる. 三上陵太 題目:非アルキメデス的代数多様体のTropical的特徴付け 概要:非アルキメデス的体上の解析多様体は数論幾何における基本的な対象であり,Tropical化はその“組み合わせ的部分”である.BieriとGrovesにより,正規トーリック多様体の代数的閉部分多様体のTropical化は,多面体の有限和であることが知られている. 本講演ではTropical化について簡単に解説をした後に,BieriとGrovesの定理の逆を証明する,つまり,正規トーリック多様体の解析的閉部分多様体のTropical化が多面体の有限和なら,部分多様体は代数的であることを証明する.これは古典的なChowの定理(射影空間の解析的部分多様体が代数的であること)のTropicalを用いた一般化である. 伊藤孝明 題目:トロピカル多項式関数半環におけるトロピカルイデアル 概要:体上の代数多様体をトロピカル化することトロピカル多様体が得られ, それらは多面体複体の構造を持つ. 一方, トロピカル多項式半環のイデアルに対しても自然な方法でトロピカル多様体が定義されるが, 一般には多面体複体の構造を持たない. そこで Maclagan らは, 特別なイデアルのクラスとしてトロピカルイデアルを定義し, トロピカルイデアルから定まる多様体は多面体複体の構造を持つことを示した. しかし, そこで定義されたトロピカルイデアルは, 通常の環のイデアルと同様に生成する, 共通部分を取るといった操作ができず, 扱いづらいものであった. 本公演では, トロピカルイデアルの定義の改良を行う. トロピカル多項式半環ではなくトロピカル多項式関数半環におけるトロピカルイデアルを定義し, 1変数の場合には生成する,共通部分を取るといった操作が可能であることを示す. 世話人:小林正典;山木壱彦