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知覚・認知の視点から運動をひも解く 樋口貴広(知覚運動制御研究室)

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#600 講演@熱川温泉病院

11月6日に,静岡県にある熱川温泉病院にて講演を行いました。この講演は,地域リハビリテーション強化推進事業セミナーとしてのイベントです。昨年度に引き続いて2年連続の講演でした。

今回は「歩行の調整力を支援する」というタイトルで2時間の話題提供をしました。運動の熟練には調整という要素が欠かせないという主張をベースとして,その調整に対して知覚・認知の機能がどのような役割を担うかについて概説しました。

歩行中に視線が下向きになりがちな患者さんや高齢者に対して,単に前を向くように教示するのではなく,下を向く原因を推定し,その解決をもって自然と視線が上を向くような方略を取るべきだということについて,関連する研究知見を紹介しました。具体的にどのような状況において下向き傾向が起こりうるかに関する参考情報に触れながら,その改善方法についても議論しました。

このほか,調整力を評価しようと考えるとき,障害物回避行動や方向転換動作は,状況に応じた動きの変化を顕著に見いだしやすいという意味で,大変有用であることについても解説しました。一口に方向転換動作といっても,課題設定によって異なる能力を評価できます。具体的な課題設定として研究発表されている内容を紹介しました。また障害物回避行動については,大学院修了生である室井大佑氏の脳卒中片麻痺者を対象とした研究事例を紹介しました。

地域にお邪魔することでしか交流できない方々もたくさんいらっしゃいます。このような機会を作ってくださった関係者の方々に深く感謝申し上げます。


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