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知覚・認知の視点から運動をひも解く 樋口貴広(知覚運動制御研究室)

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#595 修了生・室井大佑氏,日本神経理学療法学会における受賞

2017年度修了生の室井大佑君が,9月28-29日に開催された第17回日本神経理学療法学会@横浜にて,大会長賞(一般発表におけるベスト賞)を受賞しました。参加者が2500名を超える学会における,大変名誉な受賞です。

タイトルは,「半側空間無視者に対する麻痺側侵入での隙間通過練習効果の検証:ABAデザインによるシングルケーススタディ」でした。

大学院在籍時代の成果(麻痺側から隙間に入ると衝突しにくい)を活用することで,半側空間無視者の衝突を軽減できた事例を報告しました。このデータがとても興味深いのは,「衝突は減ったが,半側空間無視そのものが軽減されたわけでもない」ということです。つまり,衝突管理のための空間認知と,アウェアネスとしての空間認識には独立性があることが示唆されました。

このデータは,顕著な半側空間無視がありながら,歩行が自立しているケースでのみ取得可能ということで,珍しい症例の報告となります。臨床的意義もさることながら,基礎研究への示唆も高いと考えています。

大学院時代の研究を修了しても同じテーマを継続するということは,決して簡単なことではありません。環境の変化もありますし,何よりも博士論文・修士論文作成の過程で燃え尽きてしまうケースも少なくないからです。私自身も博士修了後にテーマを完全に変えたため,継続できることの素晴らしさが身に沁みます。


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