セラピストにむけた情報発信



第10回日本スポーツ視覚研究会





2018年9月3日
8月26日に,東京都医師会館にて第10回日本スポーツ視覚研究会が開催されました。私が世話人を仰せつかっている研究会です。今年のプログラムは4つの講演で構成されました。概要はプログラムをご参照ください。

東海大学の加藤明先生は,マウスの眼球運動の計測に基づく前庭動眼反射(VOR)のご研究について発表されました。視覚系にとってのいわば手ぶれ補正機能であるVORについて,適応的変化に対する小脳系の関与について,最新の研究成果をご紹介くださいました。

国立リハビリテーションセンター病院の清水朋美氏は,視覚障がい者スポーツの現状と課題についてご報告くださいました。2020年に開催される東京パラリンピックでは,22種目の競技が開催予定ですが,そのうち視覚障がい者が出られるのは半分の競技です。残念ながら,パラ競技の中で認知度50%を超えているのは4種目のみ(車いすバスケ,車いすテニス,水泳,陸上)であり,ロンドンパラリンピックで日本女子が金メダルをとったゴールボールの認知度は下から5番目であったことなど,普及という意味では課題があることが示されました。

帝京大学の早川友恵先生は,視覚的注意に関するご研究のうち,特に視機能訓練にかかわる成果についてご発表くださいました。中心暗点があると,周辺視野の有効視野が非常に広くても,映像のシーン理解が著しく困難になります。こうした状況の対策として周辺視野に対して視覚的注意を向ける訓練を行うことで,シーン理解が促進されることが示唆されました。

NTTコミュニケーション科学基礎研究所の柏野牧夫氏は,バッティング能力に関する潜在的知覚処理についてご報告くださいました。物理的には直線的に落ちているボール映像の動きも,周辺視野でとらえるように見ると,弧を描いて落ちているように見えるという錯覚(カーブボール錯視; Shapiro et al. 2010 Plos One)を例に,変化球は脳が作っている側面もあると説明されました。このことから,一流選手を規定する原理については,脳の潜在的な情報処理に着目すべきだと主張しました。

今回も多くの参加者の方々にご参加いただきました。来年の研究会も今年と同様,8月の第4日曜日に開催予定です。


(メインページへ戻る)