セラピストにむけた情報発信



歩行リハビリテーション時の理学療法士の言語教示:注意の内的・外的焦点化
(Johnson et al. 2013)




2018年6月4日
ここ最近,注意の内的・外的焦点化に関する論文を連続して紹介してきました。今回ご紹介する論文は,理学療法士がリハビリテーションの場面で注意の内的・外的焦点化を促すような教示をどの程度行っているかについて,ビデオ分析に基づき報告した論文です。

Johnson L et al. Internal and external focus of attention during gait re-education: an observational study of physical therapist practice in stroke rehabilitation. Phys Ther 93, 957-966

研究では,8名の女性理学療法士(経験年数3-12年)が,脳卒中患者を対象に歩行のリハビリテーションを行っている最中の様子をビデオ撮影しました。その映像を分析することで言語教示の内容を解析し,注意の内的・外的焦点化を促すような教示を検討しました。測定対象となった理学療法士は,研究の真の目的(すなわち注意の内的・外的焦点化を促すような教示の頻度の測定)は知らされていませんでした。

分析の結果,そもそも理学療法士の言語教示の頻度はとても高く,14秒に1回は,患者に対して何らかの言語教示を行っていることがわかりました。また8名中7名においては,注意の内的・外的焦点化を促すような教示が教示の過半数を占めました(それ以外は,“良いですよ!”,“そのまま続けて!”といった一般的教示)。

それらの内訳をさらに分析すると,77%の教示が内的焦点化(例:膝が十分に曲がっていないですよ),22%の教示が外的焦点化(例:マーカーを踏んでみてください),11%の教示が両者を混ぜたような教示(つま先を上げて,ブロックの上に足をついてください)になりました。

この分析から著者らは,リハビリテーション中の声がけは,患者に対して内的焦点化へ誘導する傾向があると結論づけています。外的焦点化の有益性を説明するための仮説(constrained action hypothesis)によれば,内的焦点化を誘導しすぎると,対象者は運動の自動性を獲得しにくくなります。著者らはこうした考えに基づき,内的焦点化へ誘導する教示を頻繁にしすぎることは,リハビリテーションの効果を減じさせることにもつながりかねないと警告しています。

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