セラピストにむけた情報発信



サッカー国際審判,西村雄一氏との講演(Football groove)その1




2018年1月29日
前回サッカー国際審判,西村雄一氏との講演のイベントのうち,西村氏の講演の様子について紹介しました。今回は,その内容を受けて私の方で話をした内容をご紹介します。

「状況判断の心理学」というタイトルで話題提供をしました。心理学・認知科学の領域では,状況判断(意思決定)に関する様々な研究があります。私の発表では,見るということに関する教科書的な知識や,スポーツ選手の状況判断に関する実験研究の紹介をしました。

今回の発表では,状況判断にかかわる知覚・認知情報処理のプロセスを,3つの観点から説明しました。「状況を視覚でとらえる」,「必要な情報に注意を向ける」,「記憶・身体情報との照合」という観点です

「状況を視覚でとらえる」については,眼を動かすことに関する基礎知識や,盲点の存在といった,教科書的知識を紹介しました。こうした知識をかみ砕いて理解するだけでも,状況判断に関する様々な話題が提供できることを説明しました。一例として,ラインズマンの見る位置と誤審に関する研究例を紹介しました(Oudejans et al. 2000 “Errors in judging 'offside' in football.” Nature 404, 33)。

「必要な情報に注意を向ける」については,視覚でとらえた情報を意識化するには,注意を向ける必要があることについて説明しました。たくさんの情報の中からどの情報に注意を向けるのかについては,知識や経験を通して最適化されていくことや,逆に熟練者であるがゆえに,常識とは異なる状況で注意の監視から逃れてしまうことについて説明しました。

「記憶・身体情報との照合」については,状況判断において,自らの運動系の情報が参照されている可能性について説明しました。バスケットのフリースロー成功率や,テニスのサービスの方向性を予測する場面では,そのスポーツの熟練者の方がより正確に予測できます。しかし,評論家や記者のような,いわば”見るプロ”の場合,必ずしもその精度は高くないことから,「運動系を参照してみる(運動のシミュレーションを判断に使っている)」といった考え方がされています。

西村氏にもこの話題提供を聞いていただき,自らの主観と合致する点などを,エピソードを交えて話していただけました。


 
 
 


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