セラピストにむけた情報発信



本を出版します(「姿勢と歩行_協調からひも解く」,三輪書店)




2015年5月18日

5月27日に本を出版いたします。私にとって,3冊目の著書となります。

樋口貴広・建内宏重 「姿勢と歩行:協調からひも解く」,三輪書店,2015

 


この本では,”協調する身体”をキーワードとして,姿勢と歩行(主として立位姿勢)の制御とその障害について解説しています。

共著者は,京都大学医学研究科理学療法学専攻の建内宏重氏です。建内氏には,「身体全身の協調」をキーワードとして,ご執筆いただきました。筋骨格系の各要素が具体的にどのように協調し,姿勢や歩行を支えているのかについて,ご自身の長年の研究・臨床経験や,最近の研究動向を踏まえてご解説いただきました。

私の担当章では,「中枢,身体,環境という三者間の協調」をキーワードとして執筆いたしました。立位姿勢の維持であれ歩行であれ,それ自体は中枢神経系の司令に基づく筋骨格系の振る舞いです。しかし,だからといって筋骨格系が中枢神経系に隷属的に支配されている,という関係にはありません。歩行では,振り出した下肢が環境に作用することで,様々な感覚情報が生起します。中枢神経系は,この感覚情報を受容することで状況を把握し,事後の司令内容を微調整する結果,常に安定したバランスを維持することができます。

このように見れば,むしろ筋骨格系と環境の相互作用が中枢神経系の司令を形作っているといっても,過言でない側面があります。私の担当章では,こうした主張を支える研究についてまとめました。

本書では,建内氏のご執筆を第1部,樋口の執筆を第2部として,それぞれ姿勢と歩行に分けて章立てをしました。以下は,各セクションの見出しの一部です。

目次内容の詳細は,こちらからご覧いただけます。
  • 第1部(建内氏)
  • <姿勢制御>
  •  ・ヒトの姿勢の力学的平衡
  •  ・身体各部位のアライメントの協調関係
  •  ・運動連鎖と姿勢制御
  • <歩行>
  •  ・受動的制御と能動的制御
  •  ・筋の機能的協調関係
  • 第2部(樋口)
  • <姿勢制御>
  •  ・3つの情報に基づく姿勢の知覚制御
  •  ・姿勢の認知制御
  • <歩行>
  •  ・歩行の予期調整
  •  ・注意と歩行


本書では,「クリニカルヒント」というコーナーを設けました。各セクションで紹介した研究知見を踏まえて,具体的にどのようなメッセージが出せるのかについてまとめたものです。特に,建内氏の執筆されるクリニカルヒントには,実践に応用できる様々な情報が提供されています。

基礎研究にのみ携わっている私にとって,クリニカルヒントの執筆は負荷の高いタスクではありましたが,できるだけわかりやすいメッセージを打ち出すことを考える上で,良い訓練になりました。

本書は,建内氏にとっては処女作となります。非常に読みやすい文書で,読者に語り掛けるように,専門知識をわかりやすく解説してくれました。”協調”という言葉をキーワードとして見えてくる,姿勢と歩行の実態について,お楽しみいただければ幸いです。

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