地球温暖化を精度よく予測するためにCO2濃度分布を推定する数値モデル(全球大気輸送モデル)の開発が進められている。この数値モデルでは、実際の観測データからソース(排出源)やシンク(吸収源)を推定する手法(インバース法、逆解法)であるが、モデルの拘束条件としてCO2濃度の高度分布の情報が重要であるにもかかわらず、高度分布の観測については、商用航空機やバルーン、高地観測所で行われている観測結果が利用されているに過ぎない。商用航空機やバルーンによる観測は観測頻度が低く、また、高地観測所の観測は、高度方向の観測が1点に限られ、モデルの拘束条件としては不十分であるのが現状である。
一方、地球規模の気候変動の影響を受けて、より短い時間スケールの変動である気象では、災害に直結するより激しい現象が増えると予測されている。この激しい気象現象を予測するためには、雲や降水粒子が存在し、実際に激しい気象現象が起こっている空間内のみではなく、発生する以前(直前)あるいは周辺空間の気象場を詳細に把握する必要があると考えられている。とりわけ、風(風向・風速)と気温は最も基礎的な気象要素であり、気象擾乱の予知のために重要である。風向・風速に関しては、電波を用いたウインドプロファイラーにより対流圏下層の観測は可能となっているが、全対流圏の風向・風速や気温の高度分布については不十分である。
さらに、本申請での開発のような、CO2濃度と風向・風速と気温の鉛直分布を同時に測定することが可能な手法は他に例がなく、CO2のフラックスの推定などこれまででは不可能であった物理量の測定が可能で、地球温暖化予測に関する研究の推進に寄与することが期待できる。