研究概要


久保研究室では有機合成化学を基軸とした環境とエネルギーに貢献できる機能物質や分子システムの提案を目指した研究をおこなっています。

エネルギー課題に対応できる光機能材料

再生可能エネルギーの有効利用の観点から、有機系太陽電池の開発が注目されています。有機系色素増感太陽電池(DSSC)のもつSi系にない特徴として、 1) 製法が簡単で低コスト化が可能。無機系に比べて廃棄物の低減;2) しなやかで軽く意匠性に優れておりウエアラブル端末への適用ができる、などが挙げられます。 しかしながら、その達成には光電変換効率の向上が不可欠です。われわれは、(近)赤外光が太陽光輻射エネルギーのうち約50%を占めることに着目し、 (近)赤外光を有効活用できる色素として、優れた長波長光吸収特性および安定性を持つジベンゾピロメテンホウ素錯体(Dibenzo-BODIPY)を合成し、DSSCへの適用を行っています。

エネルギー課題に対応できる光機能材料として、光電気化学セルを用いた水素発生に関する研究もおこなっています。 変換したエネルギーを貯蔵するという観点から、光触媒や光電気化学セルを用いた水の直接分解による水素製造が注目されています。 われわれは、近赤外線吸収型増感色素と水酸化触媒を共吸着させた光アノード電極を用いることで効率的な水素発生を実現しました。

環境保全用センシング材料

過酸化水素は活性酸素の一種であり、酸化ストレス関連分子であるため、細胞内挙動の時空間イメージング用蛍光プローブの開発が活発におこなわれています。 一方、過酸化水素蒸気検出できる試薬はセキュリティーツールとして有効です。われわれは、過酸化水素を化学的に測定できる線量計の開発を進めています。

分子組織体の設計と構築

分子特有の化学的性質だけでなく、分子間の相互作用や空間配置にある秩序を持たせることができれば、 単分子ではえられないユニークな機能をもつナノ組織体をつくることができます。 しかしながら、所望のナノ組織体を構築するためには、構成要素となる分子の相互作用を階層横断的に制御する必要があります。

われわれの研究室ではホウ素のもつ化学的性質を利用して、階層横断的な分子間相互作用の制御を検討しています。 その取り組みにおいて、ボロン酸とジオールとの逐次的なボロン酸エステル結合反応が階層構造を持つ分子組織体からなる花弁状のマイクロ粒子を形成することを見出しました。 このマイクロ粒子はさまざまな機能を付与できる優れた表面機能化特性を有しており、 これまでに金属ナノ粒子を担持した不均一系触媒やケモセンサーを機能化した環境保全用の白色発光センサーの開発をおこなっています。

固体表面の新規化学修飾法の開発

ボロン酸がジオールと温和な条件で共有結合できる性質を生かした機能材料開発の一環として、 ポリビニルアルコール(PVA)の固体表面を簡便に機能化できる化学修飾剤の開発をおこなっています。 所望の機能をもつ分子にボロン酸基をアンカー部位として導入することで、 粒子や薄膜、ナノファイバー、スポンジといったさまざまな形状のPVAの表面を浸漬や塗布などによって簡便に化学修飾することができます。


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