---P3 <バリアフリーチェック・言葉の地図>  バリアフリーチェックは一昨年から始めて第三回目の取組となりました。今回の取組では、第一回目の調査の時と同様に1・6号館に加え、講堂のチェックを行いました。チェックの際には第一回目の時の調査では十分に確認できなかった点についてチェック項目を改めることで確認することができました。  チェック作業では、バリアフリートイレや各棟のエレベーターを中心に確認をしました。例えば、『左側にウォシュレットのスイッチがあり、右側にトイレットペーパーがある場合、麻痺がある人はどうしたらいいんだろう』『このトイレは大型の車いすなら通れないのではないか』などと話しながら調査を続けており、普段とは異なった目線で大学の敷地を歩くということに新鮮さを感じる学生もいました。  また、言葉の地図の作成も実施しました。言葉の地図とは、視覚障がいがある方などの地図を視認することが難しい方に対応するため、目標地までの経路についてテキストデータで提供するものです。例えば『南門から6号館まで、徒歩およそ4分、距離およそ228メートルの道案内を行います』といった情報を冒頭に伝達した後に、各道順を『のぼり階段を12時の方向へ10段のぼると、点字ブロックの曲がり角があります』『10m先の警告ブロックを右折すると〇〇があります』といった情報を点字ブロックを中心として描くことで、視覚障がいのある学外からの来訪者が大学の施設を利用する時に特に大きな意義があります。この言葉の地図のデータについては、本学のキャンパスマップ( https://diversity.fpark.tmu.ac.jp/people_with_disabilities/textmap.html)からも閲覧可能となっています。今後もこれらの施設のチェックは継続していく予定です。学内でご関心のある方がいらっしゃれば、ぜひキャンパス内のチェックをご一緒して、普段とは違う視点を身に着けてみませんか?(益子) ☆写真①=車いすでトイレットペーパーの位置を確認する様子☆ ☆写真②=車いすに乗りトイレのドアの幅を確認する様子☆ ☆写真③=アイマスクをして学内の点字ブロックを歩いている様子☆ ------- <2023年度学生支援スタッフ活動の総括>  今年度の学生支援スタッフの活動は学内での活動のみならず、学外での交流や学びも充実させることができました。学外での交流を中心とした取組では、高尾山登山やBBQなどを行いました。次に学習を中心としたものでは、他大学やろう学校、そして発達障がいのある学生への学習塾を見学しました。こうした学習の場は、多くの学生支援スタッフにとって、障がいのある人たちのリアルな生活場面を垣間見る貴重な経験となりました。参加する学生の中には教職課程やリハビリを専攻する者もいました。  この他にも、体験型の学習及び交流の機会として、江の島観光体験を行いました。この体験は参加者の多くが長時間車いすを押したり、座ったりする経験が無い中で、実際に車いすを使用して電車に乗り、外出することで新たな眼差しを獲得する事を目的に行いました。こうした一つ一つの体験は、日常の彼らの生活を別の観点から見つめ直すことに繋がるだけでなく、日々の街中を歩くときの視点にも変化をもたらすことができます。障がいのない人と比較し、障がいのある人たちの生活が果たしてどういったところで不便さを伴うのか。どうしたらそれを回避することができるのか。こうした想像力の獲得はダイバーシティ推進を図る目的以外にも、彼らに実りの多い気づきを与えてくれるものと思います。  実際にこうした取組による効果は、学生支援スタッフの学内での活動にもポジティブな影響を与えたと思われます。例えば、パソコンテイクの派遣数が前年比でも数倍となったことから、人材養成の1年ともなりましたが、『聴覚障がいのある学生が何を望むのか』『支援をする上ではどんなことを大事にしたらいいのか』等といったことについて彼らが考える姿勢からは、例年以上に真剣さが強く表れていました。また、バリアフリーチェックや言葉の地図を作成する活動においても、これまで以上に熱心に取り組む姿勢が現れていました。  次年度もこれらの体験は継続して行っていきたいと思います。関心のある方がいらっしゃればぜひ一緒にご参加されてみませんか?( 益子) ☆写真=レインボーブリッジを背景にみんなで記念撮影☆ ------- コラム<ダイバーシティとスポーツ~トランスジェンダー アスリトの参加をめぐって③~>  トランスジェンダーの女性選手の競技参加をめぐり、国際オリンピック委員会(IOC)は2021年11月に10項目のポリシーを発表し、各競技団体がこれに基づいて参加のためのルールを作るよう要請しています。  これを受け、2022年6月に国際水泳連盟が、エリートレベルの国際大会については、男性の思春期を経験した場合は女子競技への出場を認めないことを決定しました。 これに続き、陸上競技やラグビー、自転車競技など多くの国際競技団体で、トランスジェンダーの選手が女性として競技に参加することを認めない措置がとられています。  性別による排除とも取れるような動きが広まる一方で、国内レベルに目を転じてみると、フランスラグビー連盟がすでに2021 年5月にトランスジェンダー女性の競技参加を認める裁決を全会一致で可決しているように、包摂的なルール作りに取り組んでいる組織もあります。アメリカフェンシング連盟(USAF)はさらに一歩踏み込んだ形で、『トランスジェンダー・ノンバイナリー・アスリートポリシー』(注1)を策定し、出生時に割り当てられた性別に関わらず、性自認/性表現に沿った形でUSAFが公認する大会に参加することを認めています。  競技特性により、どういったルールが望ましいかは異なるでしょう。しかし、IOCのポリシーに明記されているように、何よりも包摂的なルールであることが求められています。自身が望む性別での競技参加を実現することと、競技の公平性を保つことは決して対立するものではありません。包摂的なルールを作るために、競技関係者はもとより、スポーツに携わるすべての人が知恵を出し合うことが、いま、強く求められています。(藤山)