---P2 DIVERSITY WEEK 2023 文化的多様性講演会(0605) 『私たちが正しい場所に、花は咲かない』  イスラエルおよびパレスチナ自治区を訪れ、ひとつの土地をめぐり争うユダヤ人とパレスチナ人の双方の側からの生活を記録するプロジェクトを進めている、写真家の小山幸佑さんにお越しいただき、作品のスライドショーとトークを行いました。  イスラエルやパレスチナは『紛争地帯』というイメージで伝えられがちですが、もともとは観光目的で現地を訪れたという小山さんは、どちらの立場でもない日本人の自身が見て、実際に触れ合った現地の人々の暮らしを中心に撮影しています。 初めてイスラエルを訪れた際に、偶然に声をかけられ、自宅に招いてくれた女性と話す中で、パレスチナにも行くことを話したとたんにその女性の顔色が変わったことに深い印象を受け、お互いの人々の間に何があるのか、写真を通じて考えてみたいと思ったことが、このプロジェクトに取り組むきっかけだったと言います。 小山さんの写真は、そこに一人ひとりの人間が生きていて、『普通』の生活があることを示してくれています。 相互の紛争についても、お互いにそれぞれの言い分があり、どちらが悪でどちらが善などと単純に分けることなどできないことも、写真から見えてきました。  参加者からは、『イスラエルとパレスチナ問題について、ニュースや教科書でみる以外の現地の状況を見たのが初めてで、衝撃を受けました』『そこで生まれ育っていないからこそ見えてくるものがあると感じました』などの感想をいただきました。  現在、小山さんはイスラエルとパレスチナ、それぞれの地域に住む人々に、お互いに向けた『手紙』を書いてもらうプロジェクトを進めています。 言語が大きく異なるため、おそらくは読まれることのない手紙ですが、お互いのことを想像し、歩み寄るよすがになるかもしれない。 どちらの立場でもない小山さんだからこそ、お互いをつなぐことができるかもしれない。そんな思いを抱いたスライド&トークになりました。 (藤山) ☆写真☆講師の小山幸佑さん ☆写真☆小山さんの取材作品を見る学長とダイバーシティ推進室長 ----------- DIVERSITY WEEK 2023 セクシュアル・マイノリティ勉強会(0606) 『誰もが心地よく利用できる小学校のトイレのデザインを考える』  卒業研究で『トランスジェンダーに配慮した小学校のトイレのあり方』についてまとめたブックを作成し、現在は本学大学院で研究を続けている神字里奈さんにおいでいただき、参加者と意見交換を行うセッションを開催しました。  小学生のうちから自身の性別に違和を感じている当事者は多く、そのため男女別のトイレに抵抗感があり、小学校のトイレに行けない当事者もたくさんいます。神字さんは、当事者が学校生活を快適に過ごすためにも、小学校向けのオールジェンダートイレのサインや、内装のデザインを考えて全国の小学校に提供したいと考え、卒業研究では、文献調査やトイレメーカーなどへの聞き取り調査を行い、その成果をブックにまとめました。  神字さんは、小学校のトイレづくりのヒントとして、①選択肢を増やす②特別感がなく自然な流れで利用できる③癒しのリフレッシュ空間である④愛着が持てるデザインであることの4点を挙げました。  ディスカッションでは、小学校以外の場面でのトイレのあり方についての議論が中心となりましたが、オールジェンダートイレのピクトグラムがあることで、逆に使いづらいと感じる当事者もいることや、すべてのトランスジェンダーがオールジェンダートイレを望んでいるわけではないことなどについて、フロアとの活発なやり取りが交わされました。 昨今話題になっている性犯罪への不安については、女性の安全が確保されることは当然必要なことだが、トランスジェンダーへの配慮は対立するものではなく、同時に検討していくことが必要だとの声がありました。  参加者からは、『今日のお話をうかがい自分の視野が広がったような気がします』 『問題は浮上しても解決策はなかなかあがってこず、当事者が我慢するというところに終始していた様に感じます。今回の発表は、新たな提案をしてくださる方がいるという実感が得られて、元気が出ました』 などの感想が寄せられ、ディスカッションを通じて議論が深まり、さまざまな視点が共有された様子が感じられました。 (藤山) ☆写真☆講師の神字里奈さんと当室セクシュアル・マイノリティ担当藤山との2ショット ----------- DIVERSITY WEEK 2023 第1回バリアフリー講習会(0606) 『手とアートで伝えるエトセトラ』  門秀彦さんはろう者の両親をもつCODA(Children Of Deaf Adults)であり、NHKでのアニメーション、キットカットのパッケージ、スターバックスコーヒーの店内アートなどを手掛けるアーティストです。 講習会ではご自身の描かれている『Talking Hands』をコンセプトにした絵画のルーツを中心にお話しをうかがいました。  門さんは幼少の頃、家庭の内外で異なるコミュニケーション方法を用いて人と対話をし続けてきました。例えば、両親とのコミュニケーションでは、手話を使い、大人のろう者との間では、絵を用いつつ意思疎通を図ってきました。  そうした中で、門さんからは、“『コミュニケーションにおいては、互いに通じ合えない部分があって当たり前なのだ』といった前提を持つことが大事”といったお話があり、会場では大きく頷かれる方もいました。  実際に、参加者の感想では、『(コミュニケーションに対し)“全部わからなくてもいい”という言葉にも救われました』といった感想や、『(中略)初めて『コーダ』と呼ばれる人がいることを認識しました。 障がい者を親にもつ子がいることは想像すればわかるのに、無意識に自分の世界から排除していたことに気づき驚愕した。 今回、自分の世界が狭まっていたことに気づけて良かったです。 コミュニケーション論も興味深く、これからは自分の言葉も相手の言葉も半分くらいしか理解されない/できていないと思うと、楽に過ごせそうだと思いました』 といったものも寄せられました。  このように、日々の生活の中での“伝える”“伝わる”といったことの意味について改めて考える機会となった講習会でしたが、今年度のバリアフリー講習会は今後もう1回、実施予定です。 ご関心のある方がいらっしゃいましたら、是非次回もご参加ください。 (益子) ☆写真☆講演中の講師、門秀彦さんと当室障がい担当の益子