---04 富士通株式会社研究本部 人工知能研究所 森田 菜月 もりた なつき 首都大学東京大学院 都市環境科学研究科 分子応用化学域博士前期課程修了 仕事のあり方を変える手法を開発する ☆本人写真☆ <キャリア/今の研究>  私はもともと、コツコツ何かを積み重ねることが好きでした。そういう意味で、勉強も好きでしたから、大学に入った時からぼんやりと研究者になりたいと考えていました。大学では人工光合成の研究室に所属して、実験とモデリングの両面から研究に取り組みました。前期課程を修了後、これまで学んできた化学の基礎研究を通じて社会に貢献できると考えて、豊田中央研究所に就職しました。  ところが、配属されたのは、シミュレーションを用いて車両の設計手法の開発を行う部署でした。機械系で、大学時代とまったく異なる分野でしたので、驚きも戸惑いもありましたが、やるしかないと思い勉強しました。会社にもセミナーへの参加機会を提供してもらうなど、周囲のサポートもあり、その都度勉強して、順を追ってやっていればできるようになることを実感しました。  その後、結婚を機に拠点を変えようと考え、富士通研究所に転職しました。大学院修了時とは異なり、機械分野での経験も積んだことで、転職の間口が広がったと感じています。現在は、持続可能な社会の実現に向けた個々の課題に対して、シミュレーションを使った手法開発に取り組んでいます。対象とする現象は様々ですが、現象のモデリングやシミュレーション、設計の最適化への取組は、私のこれまでのキャリアで一貫している点だと思います。 <学生時代>  大学院にいた頃は、好奇心にしたがって自由にやりたい実験や研究ができる環境にあって、ものすごく充実していました。紊期もノルマもなく、研究の楽しいところを楽しんだと思います。その中で、仮説を立てて検証する、前提が間違っていないか確認する、適切な比較対象を用意するといった研究の基本を身に付けたことは今に役立っていると思います。ただ、試行錯誤が楽しく実験ばかりに取り組んでいたので、もっとその成果を論文にまとめるということにも力を注いでいればよかったとも考えています。 <仕事のやりがい>  手法開発は、社会に役立っていると実感できることがやりがいです。開発した手法を現場で受け入れてもらうためには、単に新しい方法を開発したり自動化したりすればよいわけではなく、その手法を用いることでより良い仕事の成果が生まれるなどの付加価値が必要な場合があります。そのため、どのような課題があり、また将来どのような課題が生じうるのか、研究を始める前に様々な角度からしっかり調べることが大切です。そうした見通しが現場の人に受け入れられた時は、特に嬉しいですね。 <今後の展望>  学生の時とは異なった分野で研究を行っているので、現在の仕事に必要なシステム工学やコンピュータサイエンスといった分野を体系的に学ばなければならないと感じています。私自身、就職してからも勉強し続けていますが、それは特別なことではなく、まわりを見ても同じです。そうやって学び続けて引き出しを増やし、スピーディに研究開発を行って、自分の開発した手法でお客様の仕事のあり方を良い方向に変えて行けると嬉しいですね。 <研究者を志す学生へのメッセージ>  ひとくちに『研究職』と言っても、企業によってその働き方や役割は異なるので、職種の吊称で判断するのではなく、具体的に何ができるのか、中身を確認するようにしてください。研究者は裁量が大きく、自律的な働き方が求められる世界ですので、その分、締切や目標を守ることが大切になります。また、私自身がそうであったように、5年10年後にどうなるかはわかりません。なんでも機会があれば学んでおいて搊はないと思います。