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首都大学東京 都市環境学部 都市基盤環境学科 コンクリート研究室

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コンセプトAbout our Speciality -Overview, 2015

 研究概要 ー2015年度
  1. 構造物の補修補強のための間隙充填モルタルの充填性能に関する研究
  2. コンクリートの締固め特性に及ぼす鉄筋配置の影響に関する研究
  3. プレキャストコンクリート製品の耐久性に及ぼす表層部細孔構造と水分供給に関する研究
  4. CFRP格子筋と吹付けモルタルを用いたコンクリート部材の補強における界面せん断耐荷挙動の把握に関する研究
  5. 高度浄水処理施設の躯体コンクリートにおける劣化原因の推定に関する研究
  6. コンクリートにおける環境負荷抑制に関する研究
  7. 極初期の組織形成および養生温度が温度履歴養生後のモルタルの強度および組織構造に及ぼす影響に関する研究
  8. コンクリートの破壊エネルギー試験における寸法依存性に関する研究
  9. 鋼板接着補強RC床版のモニタリングに関する研究
  10. 弾性波初動部を用いたPC部材のグラウト未充填部検出の基礎検討




1.構造物の補修補強のための間隙充填モルタルの充填性能に関する研究
鋼板巻立て工法などに用いられるセメント系充填材(以下、間隙充填モルタル)は、主として狭い間隙を密に充填することが求められるが、全ての施工現場で間隙を完全に充填できているかは不明である。充填性を高めるためには、狭い間隙を充填する流動性が求められる一方、骨材の分離による閉塞を起こさない材料分離抵抗性が必要となる。間隙充填モルタルの充填性は、フロー試験で得られるフロー値で評価可能であるとされており、フロー250mm程度が充填性の境界であることが示されている。本研究では、フローを250mm(±5%)に統一した試料を作製し、各種試験を実施し、材料分離特性ならびに充填性と塑性粘度との関係を明らかにした。

2.コンクリートの締固め特性に及ぼす鉄筋配置の影響に関する研究
コンクリート構造物の耐久性を確保するためには、かぶり部まで密実で均質なコンクリートとすることが望まれる。近年、コンクリート材料の多様化に伴い、同一スランプであっても様々な配合や材料構成が想定され、ワーカビリティーが異なるコンクリートが多く存在する。本研究では、細骨材率が異なるスランプ8cmのコンクリートを組み立て鉄筋の内側のみに打込み、内部振動機によってかぶり部へ流動させ場合を対象に、かぶり部の締固め特性に及ぼす配筋条件ならびに締固め条件の影響を検討した。実験では、内部振動機の作用によりコンクリート中を伝播する加速度を計測し、かぶり部の充填状況を目視観察することで、振動伝播とかぶり部の充填性について考察した。

3.プレキャストコンクリート製品の耐久性に及ぼす表層部細孔構造と水分供給に関する研究
プレキャストコンクリート製品は、一般に工場において蒸気養生が施され、所要の強度を発現し、現場での養生が必要とならないため、工期短縮等による利用促進が期待されている。ここで、一般的な蒸気養生条件は、結合材に普通ポルトランドセメントを使用した場合の温度履歴が与えられるが、近年のプレキャストコンクリート製品には、結合材に高炉スラグ微粉末やフライアッシュなどの混和材がセメントの一部と置換される場合も増加している。これらの結合材は、比較的温度依存性が高いとされ、蒸気養生後のコンクリートの耐久性改善が期待される。本研究では、混和材を用いたコンクリートの蒸気養生工程を変化させ、コンクリートの細孔構造に及ぼす影響を検討した。

4.CFRP格子筋と吹付けモルタルを用いたコンクリート部材の補強における界面せん断耐荷挙動の把握に関する研究
既設コンクリート構造物の補修・補強工法の一つに、連続炭素繊維(CFRP、Carbon Fiber Reinforced Plastics)格子筋と吹付けモルタルを適用した断面修復工法がある。この工法は、引張強度の高いCFRPを用い、またCFRPが耐腐食性材料であることから、コンクリート部材の曲げ補強に広く用いられているが、コンクリートの梁や壁面などの部材側面を対象としたせん断補強においても有効であると考えられる。本研究では、本工法によるせん断補強効果の定量化を目的とし、梁部材のせん断ひび割れ部を模擬して前年度実施した要素試験の結果を対象に、補修界面のせん断付着応力分担域について、コンクリートと吹付けモルタルの界面の破壊エネルギーを仮定したFEM解析により検討した。また、格子の交差部の引き抜け抵抗特性を実験的に把握し、格点部の挙動及びCFRPの軸方向付着特性を明らかにした。

5.高度浄水処理施設の躯体コンクリートにおける劣化原因の推定に関する研究
高度浄水施設の生物活性炭吸着池における躯体コンクリート表層部の早期劣化が報告されており、これまでの研究結果より、劣化要因は、置換性の水に曝されることによる成分溶出に加え、活性炭内の微生物呼吸に由来する遊離炭酸による化学的侵食、さらに活性炭の逆洗浄や壁面の高圧水洗浄による物理的作用の複合作用であると推察した。本研究では、遊離炭酸による化学的侵食に着目し、モルタル供試体の劣化促進実験を行った。その結果、供試体の質量変化率および表面高さの減少は、供試体表面に接触する総遊離炭酸量に依存することを明らかにした。さらに、本成果を用いて躯体コンクリートの化学的侵食による劣化予測を行い、実施設の外観調査結果と比較した。

6.コンクリートにおける環境負荷抑制に関する研究
a)エコセメントを用いた舗装用超硬練りコンクリートの耐凍害性の向上に関する研究
都市ゴミ焼却灰を主原料とするエコセメントを積極的に活用するためには、アルカリ量や塩化物イオン量を考慮した場合、ペースト相の体積を減じることと補強鋼材を含まないことが大変有効である。すなわち、エコセメントの適用先として、舗装用の超硬練りコンクリートが有効と考えられる。これまでに、エコセメント超硬練りコンクリート(ECRCC)は、締固め性および機械的性質で、舗装用コンクリートとして充分な性能を有していることが示されている。しかし、耐凍害性については、凍結防止剤散布下を想定したNaCl3%溶液環境下でのスケーリングが増大する傾向にある。本研究では、ECRCCの耐凍害性の向上を目的とし、より粉末度の高い紛体であるシリカフュームを用いて紛体粒子の充填構造試験を行い、この結果から得られた密充填紛体をECRCCに適用したときの凍結防止剤環境下でのスケーリング抵抗性に関して検討を行った。

b) 歩道ブロックの表面形状による再帰反射率への影響に関する研究
近年、都市部でアスファルトコンクリートやセメントコンクリート等の蓄熱体が増えたことにより、熱帯夜や熱中症等が頻発し、人体に悪影響を及ぼしている。このため、舗装表面に遮熱性塗料を塗布し、近赤外線領域の波長の光を反射させる遮熱性塗料の検討が行われてきた。しかし、舗装表面で入射光を反射しても、反射光により構造物の壁面等を暖めると、反射の効果が少なくなる。熱源となる近赤外線を入射してきた方向へ反射する再帰反射の割合を増やすことで周辺の熱環境を改善できると考えられる。本研究では、車道舗装と比較して強度、形状の自由度が高く、人体に直接的な影響を与えると考えられる歩道舗装を対象とし、夏季温度低減を目的とした基礎的な検討を行った。検討では、ブロック表面の幾何学的形状を変化させ、再帰反射率に対するブロック表面の凹部面積の影響を定量的に評価した。この結果、ブロック表面の再帰反射率を、ブロックの投影面積に対する平坦部の面積の割合(平面率と定義)により制御可能であることが示された。

7.極初期の組織形成および養生温度が温度履歴養生後のモルタルの強度および組織構造に及ぼす影響に関する研究
コンクリートに対する給熱養生は、結合材の反応促進のために行われるが、極初期材齢の水和セメントペースト組織に対して応力を生じさせる要因にもなる。しかし、給熱養生前の組織が、熱作用で生じる応力に耐えるものであるかを検討した研究はほとんどない。本研究は、熱作用を受ける前の組織形成の程度および昇温速度が、硬化後のコンクリートの力学的性質に及ぼす影響について、基礎的に検討した。熱作用を受ける前の組織形成の程度は、プロクター貫入抵抗値で評価し、プレキャストコンクリート製品の蒸気養生を模擬した温度履歴を、昇温速度を実験変数として与えた。この結果、昇温開始前の組織形成が、結合材の種類に関わらず、凝結始発まで行われている場合、一般的な昇温速度の2倍程度までであれば、硬化後の力学的特性は同等となることが明らかになった。

8.コンクリートの破壊エネルギー試験における寸法依存性に関する研究
コンクリートの破壊エネルギー試験は、切欠きはりの3点曲げ試験から得られる荷重‐開口変位曲線下の面積と供試体の自重がなす仕事量の合計値をリガメント面積で除すことで得られる。しかし、破壊エネルギー試験では、寸法依存性が存在し、切欠き高さが高くなるほど得られる破壊エネルギーは小さくなる。本研究では、コンクリートの破壊エネルギーに切欠き高さが及ぼす影響を各荷重段階で把握することを目的とし、切欠き高さを変化させた供試体に破壊エネルギー試験を実施した。また、破壊エネルギー試験時にアコースティック・エミッション(AE)法を適用した結果から破壊進行領域を算出し、その移行特性について検討を行った。その結果、3点曲げ試験における最大荷重直後の外力仕事が寸法効果に影響を及ぼしている可能性が示唆された。

9.鋼板接着補強RC床版のモニタリングに関する研究
昭和40年以前に建設された橋梁の鉄筋コンクリート(RC)床版において、鋼板をRC床版の下面に接着する鋼板接着補強方向により延命化対策が実施されてきた。近年、これらの鋼板接着補強RC床版において、鋼板の剥離が発生し、鋼板の剥落事故や床版の陥没事故などの損傷、劣化が懸念されている。現在の剥離調査では、鋼板のたたき点検が実施されているものの、作業者の主観に左右されるため、定量的な剥離位置の推定方法が望まれている。本研究では、輪荷重走行試験機によってRC床版に疲労損傷を与えた後、鋼板接着補強を適用した。本工法において、あらかじめ人工的に浮きを設け、剥離領域の進展をたたき点検の結果と衝撃弾性波法による結果を比較することで、衝撃弾性波法の適用性を検討した。

10.弾性波初動部を用いたPC部材のグラウト未充填部検出の基礎検討
ポストテンション方式のプレストレストコンクリート(PC)部材では、PCグラウトの充填不良が存在する場合、PC鋼材の腐食が生じ破断に繋がる恐れがある。また、部材耐荷力の低下や第三者被害を引き起こす可能性も懸念される。したがって、これらPCグラウト未充填部を簡便かつ高精度で検出できる非破壊試験方法の確立が求められている。本研究では、シース内のグラウト充填率を0、50、100%とした供試体に対し、衝撃弾性波法を用いて検出した弾性波から弾性波速度トモグラフィ法を適用し、未充填検出の基礎検討を行った。実験に先立ち、サンプリング周波数を変えた数値実験を実施し、弾性波速度トモグラフィ法を適用する場合の留意点を明らかにした。さらに、弾性波の初動振幅値を用いた振幅トモグラフィ法を未充填検出に適用し、その有効性を検討した。
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2013/12/3
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