ヤマアカガエル (Rana ornativentris )

更新日:11/08/04

ヤマアカガエルは、北海道を除く日本の本土に幅広く分布し、山麓の水辺から山地の頂上近くの森林まで広い範囲で見られる、良く知られた普通のカエルです。成体の体長は4-8cmで、メスの方が明らかに大きくなります。体色は変化に富み、体の横や太ももが橙色を帯びているためアカガエルと呼ばれています。しばしば同じ場所で見られる、ニホンアカガエルとはよく似ており間違いやすい。ニホンアカガエルとは、背中の皮膚の盛り上がり(背側線)が鼓膜の後方で大きく外側に曲ること(ニホンアカガエルでは曲らない)で区別できます。



ヤマアカガエルの成体


ヤマアカガエルに似たニホンアカガエル


 晩春から秋までは、主に森林の林床で昆虫・ミミズ・ナメクジなどを食べて生活しています。晩秋になると産卵場である水場に移動する個体を多く目にするようになります。一般に土壌中に潜り越冬すると言われていますが、池の水底の泥の中や小さな渓流の石の下に潜って越冬する個体も見られます。翌春、2-4月頃の降雨のあった日に活動を開始し、夜になるとイモリ池ではオスが集まり、「キャラララ・キャラララ・・・」と頬にある一対の鳴嚢をふくらませて盛んに鳴きあいます。

 同じアカガエルの仲間でも、トノサマガエルやダルマガエルとは異な、 縄張り行動は示しません。卵をもったメスが現れると、オスは我先にとメスに抱き付きメスの背中にのってペアを形成します。ペアになったメスは、 その晩のうちに直径1.5-2.4mm程度の卵を1,000-1,900個程産卵します。産卵された卵は寒天質が吸水して、直径15-20cm位のひと塊の卵塊になります。標高の低い丘陵地や平地では、ニホンアカガエルと同じ場所で産卵することも多く、その場合、産卵直後の卵塊を手に取ると、ヤマアカガエルではゼリー状の物質が柔らかく指の間からゼリーがこぼれそうになります。それに対して、ニホンアカガエルでは、ゼリーがコリコリとしてしっかりとしているため、手に取っても卵塊の形はくずれず、丸いボール状のままです。また、オタマジャクシでも、区別がつきます。




産卵前のペア


ヤマアカガエルの卵塊

 孵化したオタマジャクシは、水中で主に水草や藻類を食べて成長します。しかし、完全な草食ではなく、動物の死体や卵などを食べることもあります。春先にいち早く孵化したヤマアカガエルのオタマジャクシがヒキガエルの卵塊に多数集まり、卵までも食べていることもあります。同時に、この時期は多くの捕食者に狙われる時期でもある。トンボのヤゴやマツモムシなやイモリなど水中生活者だけでなく、陸上に棲むアオダイショウなどのヘビにも襲われてしまいます。 変態は6−8月頃が普通で、体長15-20mm位の比較的大きな子ガエルとなって上陸していきます。性成熟し繁殖を開始するまで2年程を要すると思われます。変態したカエルは、陸上でもヘビ類・サギなどの鳥類・タヌキやイタチなどの哺乳類の餌となり、多くの天敵に狙われています。そのせいか、寿命はせいぜい4-5年程度と思われます。


ヤマアカガエル覚書き

一番乗りヤマアカガエルの産卵とヤマアカの危機

 毎年この池で一番早く産卵するヤマアカガエルが、今年は早くも出現しました。例年2月には繁殖を始めるため池に姿をあらわしますが、その年の気象条件よって、その時期は変化します。1995年の冬は寒さが久しぶりにきつい冬となり、彼らの活動開始も遅れました。3月になる直前(2月29日)になって、ようやく池の中にボール状の卵塊が見られるようになりました。1996年は比較的暖かく、彼らの出現も早まるだろうと思っていたところ、2月3日の朝方久しぶりの雨が降りその晩に産卵したようです。暖かい雨で、土の中で冬越しをしていたカエル達も春の到来を感じたのでしょう。

 まだ池の岸辺近くに直径15cm位のボール状の卵塊が一つ産卵されているだけでしたが、雨が降るたびに増えていき、結局1996年は30卵塊を超えました。1月の下旬に学生さんに手伝ってもらい、池の掃除をしたのがまにあって良かった。カエル達も気持ち良く(?)産卵してくれたことでしょう。

 一匹のメスが一卵塊(約1,000-2,000卵を含む)産みますが、例年だと20-50匹のメスが1シーズンに産卵しています。毎年、何匹のメスが産卵に来てくれるか楽しみですね。

イモリ池におけるヤマアカガエルの産卵活動の年次変化

 最近数年間、特に1997年からイモリ池に産卵に来るヤマアカガエルのメスの数が減少してきました。1998年はとうとう2卵塊しか産卵されず、1999年も3卵塊だけでした。他にも、ヒキガエルとシュレーゲルアオガエルが激減しています。一体、何が起こっているのでしょうか?

 とりあえず、1998年からヤマアカガエル救出プロジェクト(?)を立ち上げ、今いろいろ試行錯誤をしているところです。1999年は、数少なくなった卵を守るべく、産卵された卵塊を岸辺に設置したコンテナボックスに保護して様子を見ています。なぜならば、最近カエルの卵が突然消えてしまうことが多く不思議に思っていました。その原因の一つに、もともとの住民であるイモリによる捕食に加え、カルガモによる捕食(?)が考えられ、その対策として始めてみたのです。幸い、今のところうまく行っているようで、オタマジャクシが孵化し元気に育ち始めています。適当な大きさまで成長したら、また池に戻してあげる予定です。これで少しでもヤマアカガエルの数が回復できればと期待しています。

 2000年の春はヤマアカ達の動きは鈍かったです。3月5日になってやっと1卵塊の産卵がありました。その後、追加があり結局4卵塊が産まれました。どう言うわけか、イモリ池には産卵せず、イモリ池下に昨年から掘った小さなカエル用水溜りにすべて産卵しました。他の動物のいない水溜りの方が、イモリなど天敵の多い池より好まれたのでしょうか。とりあえず、水溜りを作って良かったと思っています。

 幸いヤマアカ保護作戦が成功したのか、2001年の春には、大台の20卵塊を久しぶりに越え26卵塊までになりました。このまま順調に回復してくれるのでしょうか。しばらくは、はらはらどきどき見守りたいと思います。

 2002年春は例年になく繁殖活動が早く始まりました。1月21日に始めての産卵が見られたのです。ヤマアカガエルだけでなく、この年はどこでもすべての種が早く繁殖を始めたようです。

 2008年の春は意外に寒く雨も少なかったせいか、繁殖開始が各地で遅れました。イモリ池でも最近にしては遅めの繁殖でしたが、産卵数は急増し予想外の大ブレークでした。本当に久しぶりに50台を越え、総数52頭のメスの産卵が見られました。そのため、4月初め現在、池の中はヤマアカガエルのオタマで一杯です。多数のオタマは一斉に池の中の落ち葉やらに食いついて旺盛な食欲で有機物を食べつくしてくれるのか、オタマが現れてから池の水がどんどん澄んで来ました。彼らはイモリの大好物でもあり、そろそろ冬眠から覚めたイモリたちも大喜びでしょう。

 

by Tamotsu Kusano