トウキョウサンショウウオ(Hynobius tokyoensis )

更新日:16/06/24

 トウキョウサンショウウオは、福島県の太平洋沿岸地域の一部にも分布 しますが、主要な生息地は、群馬県を除く関東地方の1都5県(東京都・ 神奈川県・埼玉県・栃木県・茨城県・千葉県)の比較的狭い範囲に集中し ています。平野部と山地がぶつかる標高300mまでの低い丘陵地帯に生息し、山間の水田や湧き水のたまった小さな水場とその周囲の林が彼らの繁殖や生活の場所となっています。


産卵直前のトウキキョウサンショウウオのメス


生息分布(円形で囲った愛知県の集団は、 別種?)

 イモリ池のトウキョウサンショウウオは、八王子市戸吹町から移植されたものです。'91年春に産卵された卵のうを1対(一腹分)採集してきて、飼育してある程度大きくなった幼生を池に放流しました。放流を毎年続けた結果、4年後の'95年から産卵が見られるようになりました。このまま、うまく定着してくれることを願っています(最近の事情については後述の覚え書き参照)。

 親の全長は、8-13cm程度で、体色はかなり黄色みの強い褐色からほとんど黒色に近いものまで変異に富みますが、普通暗褐色のことが多く地味なサンショウウオです。ただし、胴体のよこには青白色の小点が地衣状斑となっている個体も多く、よく見るとなかなか美しい生き物です。

 トウキョウサンショウウオの産卵場となる水場の周囲の林の地中には、 ミミズやモグラ・ネズミなどの小哺乳類の掘ったトンネルが縦横無尽に走 り回り、彼らもそのような穴を利用し生活しています。地中でひっそりと単独生活していることや夜行性ということもあり、繁殖期以外に姿を見るのは大変困難です。しかし、一年のうちで秋は成体の姿が比較的見つけやすくなります。越冬と来春の繁殖の準備ため活動が活発になり、穴から顔を出している個体や地表の落葉の下て餌をあさっている個体を昼間でも見ることが稀にあります。特に、雨が降り冷え込んだ日の翌日の午前中などは見つかることが多いようです。11月一杯は活動を続け、ミミズ・クモ・昆虫の幼虫・ヤスデなどの土壌動物盛んに食べ、充分太って冬を迎えことになります。特に、ワラジムシ・ヒメフナムシなどは好物のようです。

 千葉県の房総半島など暖かい地方では、12月末から1月に早くも産卵が 見られますが、東京近郊などでは2月下旬から産卵が始まり、4月中旬頃まで1-2ケ月の間繁殖活動が見られます。この多摩地区では3月頃が最盛期でしょう。冬型の気圧配置も緩み、気温が上がり雨が降った日に、地中で越冬していた成体は眠りからさめ水場に移動します。まずオスが姿を現わし、そこで少し遅れてやってくるメスを待つことになります。昼間は水底の泥の中や推積した落葉の下に隠れ、日没とともに姿を現わし、思い思いにメスを求めて水中を徘徊します。水中のオスたちをよく見ると、ある一定の場所に集る傾向が見られる。枯れ枝や枯葉など、卵嚢を産み付けるのに適当なものがある場所の周辺に集まります。

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産卵に適した枯れ枝に集まり、盛んに尾を振りメスを誘うオス達

 夜が深まると、いよいよメスの到来です。どこに隠れていたのか、メスが水中に姿を現します。するとオスたちの動きは突然激しくなり、産卵に適した枯れ枝などがある場所に集り、さかんに尾を振りメスを誘います。メスが近付いてくると彼等の興奮は最高潮に達し、複数のオスが団子状に なったまま激しく泳ぎ回ります。そのようなオスの集団が水場のあちこちにでき、メスはそれらを品定めするかのように池の中を徘徊し、結局その中の一つの集団に入って産卵します。メスは直径3mm弱の卵が50-100個入った一対の透明なバナナ状の卵嚢を、先端を枯れ枝等に付着させて産み出します。産み出された卵嚢にオスたちは我先へとしがみつき、卵を受精させようと放精します。同じ有尾両生類であるイモリが体内受精をするのと違い、サンショウウオはカエルと同じようにメスが産卵した直後に、オスの精子で卵を受精させます。このような産卵行動は、主に午後11時過ぎの深夜から早朝にかけて行われることが多く、産卵行動を観察するには、寒さに耐える耐久力と忍耐力が必要です。


枯れ枝に産卵された卵のう(1メスが1対産む)

 メスは産卵の直前に水中に入り、産卵を済ませると再び上陸し繁殖場所を離れてしまいますが、オスはかなりの期間水場にとどまる個体もいます。しかし、東京の郊外では4月下旬になるとさすがに最後まで残っていたオスも上陸してしまいます。繁殖を終え上陸した成体は、再び林の中へ広く分散し、普段の生活に戻ります。繁殖池からどの程度分散するのかは、その場所の周囲の環境による変化しますが、100-300m程度と思われます。

 産卵された卵は、5月始めまでにはすべて孵化し、全長15mmほどの幼生(オタマジャクシ)になります。幼生は貪欲で、ミジンコやユスリカの幼虫など、生きているもので口に入るものは何でも食べます。初夏の間成長して、4cm程度になり、7-10月にかけて変態上陸していきます。彼らの生涯の中で、この幼生の時期は最も危険な時期です。特に孵化直後には、ヤゴ・マツモムシなどの水生昆虫やイモリなどの捕食者に、多くの幼生が襲われてしまいます。こういった捕食者による捕食だけでなく、仲間の幼生による共食いも幼生期の高死亡率の原因になっています。池の水底一杯に見られた孵化幼生もみるみる減っていき、結局変態し上陸できるのは産卵された卵のうち5%にもなりません。


孵化直後のまだ小さな幼生を共食いしている幼生

 上陸した幼体は成体と同じように、水場の周囲に広く分散し生活する。全長4-5cmの小さな幼体は、4-5年かかってゆっくり成長し、全長10cmほどで成熟し繁殖に参加するようになります。変態後の主要な天敵は、モグラ・タヌキなどの哺乳類やヘビ類です。ただし、変態後は地中でひっそりと生活することもあり、体が小さい割には意外に長生きし、10歳を越す個体も少なくないようです。


トキョウサンショウウオの生活史と生息場所


トウキョウサンショウウオ覚書




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by Tamotsu Kusano


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