ball0404.gif (4035 バイト)モリアオガエル(Rhacophorus arboreus )

更新日:16/06/24

 本州に分布する比較的大型のアオガエルです。神奈川県では、相模湖周辺にわずかに分布するだけで珍しい種ですが、東京では八王子市などの郊外ではあちこちに分布するようです。この緑地のモリアオガエルは、八王子郊外の美山町今熊山の北麓の繁殖集団から移植したものです。'91年初夏に1卵塊の卵を採集してきて、研究室にて孵化させその後しばらく飼育してから、イモリ池に放しました。そのようなオタマジャクシの放流を数年続けたところ、'93年初夏にイモリ池にて突如モリアオガエルの繁殖個体が現れ、7卵塊の産卵が見られました。不思議なことに、その年はオスの姿がまったくなく、残念ながら卵はすべて未受精だったようです。'94 年からはオスも多数姿を現し、この池生まれの世代が育っていき、もう完全に定着したようです。 最近は下図のように20-30頭位のメスが着実に繁殖しています。1年おきに数が変動しているのは、モリアオがここでは約2年で性成熟することと関係しているのかもしれません。


 モリアオガエルは樹上に白い泡巣をつくり産卵する、特異な繁殖習性をもつことで有名なカエルです。イモリ池では、5月中旬から池の周囲の樹上で鳴くオスの姿が見られるようになります。特に、雨の降る夜には多くのオスが出現し、コココ...コココ...と大きな太い声を出して鳴き 合います。耳を澄ませていると、その声にひかれてやってくるメスの枝から枝へ飛び移る音が、頭上からバサ・バサと聞こえてきます。


イモリ池におけるモリアオガエルの産卵メスの数の年次変化


 オスとペアになったメスは、まず池の中に入ります。池の水を充分飲み込んだ後、また適当な木に取りつき、樹上に登っていきます。池の水面上に張り出した 枝の先で、いよいよ産卵です。メスは尿を出しては、それを後ろ足でこね回し泡巣を造ります。背中にのったオスも同時に後ろ足を動かして、泡巣を造るのを助ける(?)とも言われています。産卵には、時間が掛かり数時間も掛かってしまいます。ですから、その間にあぶれたオスが多数産卵しているペアの周りに集まってきて、複数のオスが1匹のメスの体にしがみついて産卵するという、珍しい光景が頻繁に見られると言います。最高12匹のオスがメスの背中にくっついていた例もあるそうです。
 繁殖活動は、長い年には7月中旬まで見られます。 梅雨どきのイモリ池は、モリアオガエルの白い泡巣が池の周囲の樹木の枝先から多数垂れて下がり、なかなか楽しい風景が鑑賞できます。空中の泡巣の中で育ったオタマジャクシは、そのまま下に落下し、池の中に入ります。オタマジャクシから子ガエルの時代は、シュレーゲルアオガエルとほぼ同じような生活を送るものと思われます。変態後は林の中に広く分散していき、なおかつ樹上で生活することもあり、その生活はまだよく分かっていません。

 


池の水面上に張り出す枝に産みつけられた白い泡巣

 モリアオガエルの泡巣にはいろいろな機能があります。ここ、イモリ池のモリアオガエルを使い泡巣の機能を調べる研究が行われました。その要旨はこちらで紹介します。


モリアオガエルの鳴き声
下のアイコンをクリックしてみて下さい。

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モリアオガエルの普段の生活場所

 イモリ池では、モリアオガエルが毎年5月末から7月にかけて姿をあらわし、水辺の樹木の枝に白い泡巣を産みつけます。毎年10−20匹近くのメスが産卵します。数週間で卵からかえったオタマジャクシは泡巣から池に落下し、池の中で育っています。

 モリアオガエルは産卵期以外はこの池では姿を見ることができません。 彼らはどこから来て、どこへ帰っていくのでしょうか? 彼らの行動を追跡するために、小型の電波発信機を一部のメスに付けて調べてみました。 その結果、メスは産卵後池の北から東側にむかって移動し、最大 150m ほど離れたところまでいくメスもいました。彼らは、移動後比較的狭い範囲内に落ち着き、樹木の樹上で生活していました。また、この落ち着く場所は個体により決まっていて、毎年同じ個体は同じ場所に戻っていくようです。

 この調査の際、彼らをねらうヘビもよく観察されました。とくにヤマカガシは彼らの重要な天敵のようです。ヤマカガシもかしこく(?)、普段は主に昼間に活動するへびですが、モリアオガエルがこの池で繁殖するようになってから少し変わりました。モリアオガエルの繁殖シーズンだけ、夜にも活動するようになったのです。暗くなりカエル達が活動をはじめるころになると、ヤマカガシやアオダイショウが池のまわりに集まり、水辺の木の枝の上の登ってカエル達がやってくるのを待ち伏せているのです。そんなかしこいヘビ達のために、多くのモリアオガエルが捕食されたようです。ヘビ達もなかなかやるものですね。いずれにしても、カエルたちにとって子孫を残すのは大変なことです・・・。


 
発信機を背負い調査に協力してくれたモリアオガエルのメス
( ご苦労様でした! 感謝!)

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イモリ池で繁殖するモリアオガエルの夏場の行動圏
(赤の破線で囲った部分がそれぞれの個体の推定行動圏)


モリアオガエルの繁殖後の分散に関しては、下記の文献も参照ください。

  1. Kusano, T. 1998. A radio-tracking study of post-breeding dispersal of the treefrog, Rhacophorus arboreus. Jpn. J. Herpetol. 17(3): 98-106.

  2.  草野 保. 2005. 両棲類の生態研究:両棲類の繁殖移動を例として. これからの両棲類学(松井編). 裳華房, pp.16-27.

 

by Tamotsu Kusano